Neetel Inside ニートノベル
表紙

星の調書
ザマッチの次男坊

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「さ、冴、ぐ、草君。早まるな」
 君が手にしているのは私の大事な次男坊だ。それを、
「こ、こら、やめたまえ。やめ――、ああ――!」
 ものの見事にスーパーなかたの外へ放り投げるとは。
 けしからん。非道漢。佐渡。伊豆。種子島。
 この青年はなんて意地悪なんだろう。いや、それは前から何となく解っていたけれど。
 けれどそんなにまでして君は我々の地球掌握大作戦を阻止したいのかい。 
 己の星を護るためとはいえ、何たる不人情。
 流石はティーム平和維持のボス、やることが違う。
 ヤクザなヒーローめ。銀ちゃんもびっくりだぞ。
 などど冴草君の悪態を胸中で何ツイートか綴りながら、私は次男坊を救出するべくスーパーなかたから走り出た。
 間一髪にも車道へ転がり行きそうだった息子を抱きあげて再び店内へ戻ると、私は警備員に取り押えられてしまった。
 これはもしや、ツンデレエスパー・ビューティーナキボクロ・エロエロ星人・冴草の仕業か。(長い)
 私をポリ公へ売り渡そうとこの機会を待って先手を打ってきたというのか。
 変な汗を背筋に感じながら私は歯を食いしばった。
 するとにやける冴草君が私を捕まえている警備員へ歩み寄る。
「すいません。そいつ俺の達です。ちょっと急いでいたもんでついってやつですよ。金はほら、俺がちゃんと払いますから」
 冴草君は私が手にする買い物籠を取るとレジ台の上へ置いた。

     


 その後アジトへ帰るまで冴草君はずっと大爆笑だった。
 私がスーパーなかたの要厳重監視顧客リストへラインナップしたことがそんなに面白いのだろうか。厳重に監視してくれるなら、私へのサービスを怠らずたんまりクーポンを貢いで欲しいものだ。でなければイズミヤをひいきにするつもりだ。
 さて、今日も一日調査員としてよく勤めた。
 なんと言ってもあの小生意気なスーパーで次男坊と再開できたことは私にとって大収穫である。
 もしかするとこの星で妻に会える日も近いかもしれない。
 よし。今夜は久しぶりに次男坊と一緒に風呂へ入って汗を……? 汗を?
 おや、息子はどこへ?

 プコ

 静かなアジトの中、どこかで息子が勃起した時の音が聞こえた。
 様々な姿の同僚が同居し、様々な調書材料が居座る狭い空間、私が次男坊をこの目にみとめたとき、彼は冴草君に犯される一歩手前のところだった。
「ぬっが――――! さ――え――ぐ――さ――。何をしている――――う!」
「何って、こいつ美味そうだから食おっかなって」
 う、美味そうだと? 私の息子が美味そうだと?
 さすがはエロエロ星人冴草、君は女の子だけでなく男の子もいけるくちなのか。
 ボスという地位の者はそこまで万人を、いや、万物を愛せるのか? 
 ティ球の英雄色を好むとはきっとこのことなのだろう。私はまだまだ無知だった。
 そして現在まで私自身のお尻の操が守られていたことへ、神のご加護があったことを思わずにはいられない。
 だが今は自分のお尻より次男坊の操が一大事だ。
 こんな男に可愛い息子を寝取られるわけにはいかない。
 私は渾身の力を込めて次男坊を冴草君からもぎ取る。そして次男坊の体の一部でそそり立つものを必死でもとに戻した。
「っにすんだよ! 俺の夜食、かえせ!」
「駄目だ。いくら冴草君がいい男でモテモテで経験豊富でもこいつだけは」
「はあ? 何言ってんだザマッチ。ちゃぁんと最後は汁まで飲み干すって。だから安心しろよ~」 
 な、なんて淫らな発言。君は女の子とエッチするときもそんなことを言っているのか。
「駄目! 絶対駄目だ!」
「何だよ、ケチ。レジでそれ買ったの俺だろ」
「金なら今返す」
「別にいいよ今度で。それよりそいつ、早く食わせろよ。まあ、俺今は飢えてるから見てるだけでもオカズになるけど」
 溜まってる。冴草君ともあろう男が溜まっているではないか。
 まさかみっちゃんと喧嘩でもしているのか? もう女の子に飽きてしまったのか? それとも元からこっちの趣味もあったのか? 老若男女問わないのか? 種は?
 そしていつか、私も君の性の的にされることになっていたのか?
 ああ、だめだ考え始めたらいけない妄想がいっぱい沸いてきてしまう。
 冴草君、君という男はなんでそんなにナキボクロが――!
「もう、なにブツブツ言ってんだよ。さっさとそいつをよこせ」
「お願いだからやめてくれ冴草君、頼む!」
「もう、何だよそれ。まあいいや。だったら俺、ちょっくらラーメン食ってくるわ」
 そう言って冴草君は立ち上がると、私のブタ貯金箱から小銭を出して靴を穿き始めた。
 諦めてくれた友達へ私はやれやれと胸をなで下ろす。
 冴草君は戸口でタバコの煙を一吹きし、いつか食ってやるという怖い顔を顕にしていた。
 それからアジトのドアを閉じていく際、捨て台詞を置いて行った。 

「何だってんだ。ただの鯖缶ごときに」


 つづく

       

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