Neetel Inside ニートノベル
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僕はポンコツ
4-last『(;ー ー)』

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 ようやく話せた。
 あまり良い結果ではなかったけれど、それはどうだっていい。
 やっと自分の中で整理ができた。
 
 あと1回、がんばろう。
 
 ……さて、どうしよう。
 
 
 
 
 彼は母親に今まで溜め込んでいたことをすべて話した。あのころ思っていたこと、そして未だに折り合いがついていないこと。全部ありのまま、多少口が悪くなりつつも出し切った。
 結局は「今さら蒸し返すな」と逆ギレされ、カッとなって言い返して口論になってしまい、妹(バカではなさそうなので“バカ”を外すことにしました)と父親が仲介に入る始末。けれど、彼はようやく重い枷から解放された気分だった(また新たな問題が発生した感はあるけれど、この際気にしない)。
 
 あとは隣の、立川はるかのことだけだった。
 
 本当に、一切の交流がなくなっていた。最近では目さえ合わせていないので、どう切り出せば良いかまったくわからない。
 彼は自分ルールを決めていた。友人やバカな妹にも頼らず自分で考えよう、そう決意していたものの、早くも初日で折れそうだった。
 
 どうしよう、どうしよう。考えているうちに時間が流れていく。
 
 
 
 この日も失敗だった。帰り道、一人反省会にて対策を練っていた。
 まず1日のタイムテーブル(つまり時間割)で考えた。
 
 朝、登校した直後はどうか? だめだ、クラスメートが群がっている(数人だけど)。
 授業中は? いや、さすがに無理だろう。目立ちすぎる。
 放課後は? 向こうはさっさと帰る。無理だ。
 ケータイでメールは? そういえば知らない。
 いっそ向こうの家に押しかけて……住まいなんて知るはずもない。
 
 ……八方塞がりではなかろうか。
 
 そもそも、今さらどう話しかける? 知らぬ存ぜぬの何食わぬ顔? それとも謝罪しつつか? 音楽のことか? 小説やマンガのことか?
 まずそこがわからない。
 
 消しゴムを落としてくれないだろうか。
 ……ラッキーに頼ってどうする。
 
 
 
 一人反省会は(この日も)特にまとまりもせず、終わった。
 
 
 
 3日後。事態はなにも進展していなかった。
 彼はとりあえず、ずっと念を送り続けていた。もはやオカルト頼みなところがあった。
 
 ダメだ、ああダメだ! ……じゃあどうすれば。
 激昂、のちに落胆。ずっとそれの繰り返し。
 
 へなへなと、身体の力が抜けていくような錯覚。
 その錯覚が、奇跡的に、あることを思い出させた。
 
 
『(´・ω・`)』
 
 
 マヌケな顔文字が過ぎった。
 たしかあれは、初日の最後の手紙。ずっと無視をしていて、その日の最後に来た手紙に描かれていた、顔文字。
 今でもどんな気持ちで書かれたのかは、わからない。が、そんなことはどうでもいい。手紙、そう、手紙だ! 最も頻度の高い彼女とのコミュニケーションツールを忘れていた。これなら瞬間的に勇気を出しさえすれば自分の気持ちを伝えられる。
 以前のようなテキストファイルよりも手書きのほうがいいだろう。誠意も伝わるだろうし。
 
 まず軽く季節の挨拶から入り、近況報告。特に親と話しをしたことをつらつらと書いた。
 そして手紙の返事。あのドラマは王道だからいいんだ、キミはデッドボールPの本質をわかっていない、たしかに数学はつまらない。などなどを書く。
 最後はこれからのするべきこと、したいことを書いて終わり。
 
 A4用紙に文字がいっぱいになってしまった。客観的に見て、これは読みたくなかった。
 
 もっと気楽に読んでもらえて、そして自分の気持ちを伝えられるような内容。
 思いついたことを書いてみた。10文字にも満たない言葉。それと自分らしくないアレを描く。
 
 ……これは、いいかもしれない。「これはどうだろう」を通り過ぎ、1周回って「これがいい!」になっていた。
 
 書けた。あとは渡すだけ。心臓がバクバク鳴り過ぎて爆発してしまいそうだ。
 
 彼女は寝ている。
 そっと置けばいいだけ。
 そっと、そっと。
 
 そっと置こうとしたものの、勢い余って手に当ててしまった。
 
 
 
 それでも手紙を渡せたことには変りない。
 彼は彼女の反応が怖くなって、机に突っ伏して寝るふりをした。
 

       

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