Neetel Inside ニートノベル
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 また沈黙が始まる。会長は相変わらずパンをかじっている。そのパンがちぎっては減り、ちぎっては減りしていくうちに、僕は何故かどんどん追い詰められた気分になっていく。
 会長が黙っているのは僕がヒロミを泣かせたせいなのか。それとも一緒に活動しろと言われたのにもうさぼったからか。もしや両方……!?。
「本当にすいませんでした!!」
 気づいたときには、僕は正座に座りなおし、頭を地面にこすりつけていた。会長はそれを少し眺めた後、「何のこと?」とまたパンを食べ始めた。ああ、この反応は両方、いやもしかしたら+αがあるかもしれない。
「僕が悪いんです! 会長のヒーロー活動がヒーローみたいじゃないなんて彼女に言ったから、彼女が泣き出して……」
「……そんなことがあったの?」
「えっ?」
 あれ、この反応はまさか本当に知らなかったのか……。これは僕としたことが墓穴を掘ってしまった。いやあ、まいったまいった。ははっ。
「詳しく聞かせて貰おうかな? 古浦君」
「はい。ごめんなさい」
 元生徒会長の目に、現役時代の眼光が戻った瞬間だった。




「そうか……そんなことがあの時ねえ」
「ごめんなさい」
 会長は僕の話を聞いている間、目を合わそうとはしなかった。そして僕はたんたんと語った。時折自分の正当性を交えながら。ほんの数分前のことだが、すぐにそれはとても恥ずかしいことだと思った。
「いや。まあこうらんは正しいよ。普通ならそう思うだろうねえ。うん。やっぱそうなんだよねえ。ヒーローぽくないんだよ俺。こう、なんていうか……、威厳? というか、雰囲気からヒーローって感じしないよねえ……」
 違う。確かに僕の中でのヒーローと彼はギャップがあった。むしろ、幻滅した。でもだから彼がヒーローらしくないという訳ではない。現に多少制限的ではあるがこの街の平和に貢献している。人気もある。それに街のみんなが彼をヒーローと認めていること。それがなにより彼がヒーローだという証拠ではないだろうか。
「僕は……、会長はヒーローだと思います」
「……そう言ってくれるのは君が二人目だよ」
 ありがとう、と彼は小さく呟いた。

       

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