Neetel Inside ニートノベル
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 ――とある平日の昼休み――


 四時間目終了のチャイムと同時に僕は教室を出て我先にと屋上へ向かう。屋上に出ると、初夏の気持ちの良い日差しが出迎えた。少し眩しくて、僕は右手を頭の上にかざした。
 目が慣れると、目の前に座っている男子生徒が見えた。言わなくともわかるだろうが、会長だ。
(今日も負けたか)と僕は一人残念がる。
 不思議なことに、どんなに早く教室を出ても会長は絶対に誰よりも早く屋上で昼食を食べている。僕はそれに妙な対抗意識を燃やしているのだ。
「今日も速いですねー」
 そう言いながらごく自然に彼の隣に座った。最近はすっかり打ち解けて、ちょっと込み入った話とかもするようになった。会長は聞き上手でもあり、これもきっと人気の理由の一つなのだろう。
「そうだね」
 会長はいつも通りパンを食べながら言った。
「晴れてて気持ちいいですねえ。夏到来って感じで」
「そうだね」
「僕、暑い夏意外と好きなんです。会長はどうですか?」
「そうだね」
「……なんかありました?」
「……え?」
 パンをもう一回ちぎったところで手がピタリと止まった。瞬きをしながら僕の顔を見つめるあたり、きっと上の空で話は聞いていなかったのだろう。
「だって会長はいつもそうやって僕の話を流したりしませんもん」と僕は少し強い口調で言った。
「あ、あー……」
 会長は口を閉ざしてちぎったパンの欠片をくるくると丸め始めた。
「……いや、ちょっと気持ち悪くてね」
 丸めたパンを指でどこかに弾くと、苦笑いで言った。
「大丈夫なんですか?」
「んー、ちょっとだめかもしれない。今日は早退するよ」
 食べかけのパンをレジ袋に戻すと、会長は僕にまた無理して微笑みかけた。僕はお大事にと心から言った。
 季節の変わり目は風邪を引きやすいからなあ、僕も気をつけよう、と屋上で一人カツサンドをほおばった。

       

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