Neetel Inside ニートノベル
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「珍しいな、あいつが風邪なんて」
 ヒロミはいかにも意外といった反応をみせた。まあ確かにヒーローが風邪とかギャグマンガぐらいでしか見ないが。
「うーん、じゃあ今日どうすっかな……」
「中止ですか?」
「だなー。あいつ居ないんじゃ論外だからな」
 たまにはいいんじゃね? とヒロミは笑って言った。
 となると僕は暇になってしまった。家に帰っても寝るだけだし、コンビニで立ち読みといっても愛読している雑誌はまだ売っていないし。クラスメートの大堀も村岡も帰ってしまっているだろう。他に誰か……。
「ん、なんだよ?」
 ……こいつがいた。ま、少しでも仲良くなれば二人で待機している時のあの気まずさも無くなるだろうし、良い考えかもしれない。
「暇ですし、遊びに行きません?」
「えっ?」
 本日二度目の驚き顔。僕が遊びに誘うことがそんなに意外だったかな?
「ふ、二人でか?」
「会長さんは居ませんし、そうなりますね」
「それって……」
「?」
「い、いや何でもねえ。いいぜ、行こうじゃない!」
「じゃあ、取り敢えず商店街にでも行きましょうか」
「おう」


◆◆


 何となく俺は一人ふらりと商店街へとやってきた。普段は面を着けて見ている風景も、こうして市民と同じ目線だと色々な発見がある。例えば意外と野良猫が多いこととか、本屋だと思ってた店が実は旅行会社だったとか。
 俺はこの町のヒーローなのに、肝心なこの町のことを、この町に住む人達のことを良く知らない。そして結果として、あのようなことを言われてしまったわけだ。
 ふと目の前に一際目立つ電光板が現れた。
『ゲームセンター』
 調度いい、まずはここから始めてみよう。
 そうして少し意気込みながら入り口の自動ドアの前に立った。

       

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