Neetel Inside ニートノベル
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 二人がゲームセンターをでた直後――


 自分は一体何をしているんだ? と考えたことはあるだろうか。こんな問をするのもなんか痛いが、今俺はまさにその状態だ。風邪だと仮病を訴え日々の活動をおざなりにしたのにも関わらず、更には迷惑をかけた二人をストーキング中だとは我ながら情けない。しかし好奇心というものはたとえ一万トンの重石でさえ抑えつけようがないのは分かっていただきたい。いや、ちょっと誇張表現が過ぎたかもしれない。でもそういう感じだということは――
『ゆっがったメール♪』
 突然の振動と音に取り乱す。なぜこんなタイミングでメールがっ。急いで携帯を止める。向こうには……よし、気づかれていないようだ。誰だこんなタイミングでメールをしてくる奴は!
 ディスプレイにはヒロミの名前がくっきりと浮かんでいた。俺は気づかれていたのかと思い一瞬体を縮みこませた。が、メールの内容を見てすぐにそれは無いと確信した。

『ヒロミ:大丈夫か? お前が風邪引くなんてよっぽどだろうから、今日はゆっくり休めよ? 返信は出来るだけでいいぞ。代わりに明日ちゃんと学校来いよ!!』

 このメールを見て俺が自暴自棄になったのは言うまでもない。そしてそれにも関わらずストーキングを続ける自分が屑人間だと自覚した。言い訳としては、二人の関係が気になる、簡潔に言えばこれだ。先のゲーセンでもそうだが、二人は結構仲が良さそうな印象を受けた。これはもしかすると……。そう思うと何故かモヤモヤする。が、二人を監視していると何故か少し楽になる。だからついて行ってる。
 今はゲーセンの近くのファミレスにいる。俺は二人から二つ後ろの席にこっそり座った。二人はなにやら親しげに話している。時折笑い声も出ている。さらにモヤモヤが増す。気を紛らわすために取り敢えずグラタンを注文した。熱い飯に集中すればきっとこの解せない感情も忘れられるはずだ。しかし、グラタンは熱すぎたので少し冷めるまで待つことにした。
 それにしても周りには高校生が多い。立地条件がそうさせているのか。そしてみんな笑顔だ。スイーツなどをつつきながら談笑している。その中に例の二人は違和感なく溶け込んでいる。いやむしろそれはある筈がない。毎日のように俺と一緒にヒーロー活動をしているのが異常なのだ。
 ゲーセンの時も、今もだが驚いたことがる。ヒロミはあんなに笑う子だったか? ということだ。俺といる時、彼女は笑っていたか? いや少なくともあんな楽しそうにはしていなかった。今見せているそれが今時の女子高生の自然な姿なはずだ。つまり、俺が彼女の『普通』を奪ってしまっているのではないか? 
 俺はヒロミにとって必要なのか? この間だってそうだ。俺は自分は正義の為に動いていると思っていた。だがそれは違うこともあると知った。なら俺がヒーローである意味は? 
 解らない。俺は……なんでヒーローになった?


 グラタンは冷めてしまって全然美味しくなかった。

       

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