Neetel Inside ニートノベル
表紙

見開き   最大化      

「……キミはわしが見えない相手からの声が聞こえると言ったら、信じるかい?」
 オジサンは唐突にそう言った。
「さっきからのアレですか?」
「話が早くて助かるねえ。そうだよ」
「ええっと……」
 僕が言葉に詰まっていると、オジサンはにっこりと微笑んで口を開いた。
「何言っているんだって感じだね。でも証拠があるだなあ」
「証拠……ですか?」
「キミは奇跡を信じているかい?」
「ええっと……信じてますかね」
 何故信じているか、と聞かれても根拠はない。強いて言えば何事もいい方に信じたいからだと思う。
「そうか……。変わったねえ」
「変わった?」
「いやいや、こっちの話。それより証拠だったね」
 オジサンはこほんと咳払いし、姿勢を改めた。僕もつられて同じように姿勢を正す。
「あれは、三年前だったかな。わし、余命宣告をされちゃってね。後もって一カ月って」
「三年前って……本当ですか!?」
「うむ。それで宣告を受けて失意にくれていた時に声がしてね。『俺をお前に住まわせてくれ。そうすれば生かしてやる』てな。わしは藁にもすがる思いで承諾したんだ」
「それが今の見えない相手ですか」
 にわかには信じ難い話。だが、今生きている彼が何よりの証拠であることは確かだ。
「そう! だから奇跡もあるし、わしは異常者でもないんだよ! わかったかい?」
 正直なところ彼の話は狂言にしか聞こえなかった。ただ、なんとも言えない説得力が備わっていたのも事実だった。僕はただ「はい」と答えた。

       

表紙
Tweet

Neetsha