太陽が僕らを照らす。さっきまで日陰だったところが既に日向になっていた。僕は大事な事を忘れている気がする。……まあ、いいか。暖かくて気持ちがいいし。
「さーて、そろそろオジサンは御暇するかなあ」
 そう言ってオジサンは重い腰を上げた。この時僕はオジサンに出会ってから初めて携帯電話を開いた。そして、血の気がさっと消えていくのが日中の陽気と対比されて寒いくらいに感じた。声にならない叫びを上げている。
「が、学校に行く途中だったかな? こりゃあ悪いことをしたねえ……」
「いや……もともと遅刻でしたから……」
 そう、これは身から出た錆。オジサンを責めるなんてことはお門違い。僕は、僕は今から決戦へと向かう。聖戦だ。僕の明日への系譜(出席日数)を手に入れるための……っ!
「キミのような若い子は珍しいねえ。あの子のお友達がキミで嬉しいよ」
「照れます」
「あの子は本当の友達が少ないんだよ。あんなに人気者だから、逆にね。でもあの子は誰よりも友達、仲間思いの子だ。これからも仲良くしてやってくれると嬉しいねえ」
 もちろんです。むしろこっちからお願いします。と誠心誠意言った。オジサンは本当に嬉しそうだった。その後すぐに僕はオジサンと別れ、戦場へと走っていった。



 男は最後まで親切な高校生の背中を見送った。
「……いい子だ、本当」
 そう言って天を仰ぐ。太陽はもう頭上にまで来ていた。眩しさで目がくらむ。男は目をこすった。
「いいや。わしはしがない物書きでもう満足してるよ」
 から元気な声で言う。苦し紛れに高校生のくれた飲み物をすべて飲み干した。
「ああ、そうだな。体に障るからもう帰ろう」
 そうしてゆっくりと歩み始めた。