Neetel Inside ニートノベル
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 ――翌日――
 終業の鐘が昼休みの始まりを告げた。お腹も丁度いいくらいに減っている。購買に昼食を買いに行こう、と僕は席を立った。
 そういえば、昨日僕のことを迎えに来るとかあの男の人が言っていたけど、結局なんだったのだろう、とふと思った。やはりここは無難に待ったほうがいいか。いや、僕の胃袋はそれを待っていられるほどの余裕は無い。
 にわかに廊下が騒がしくなっていく。きっとみんな購買に向かうのだろう。早く行かなければ住江高校購買名物の『ソースカツサンド住江スペシャル(略してソーカス)』が売り切れてしまう。こうしてはいられない。
「あれ? あれ生徒会長じゃない?」
「あれ、ホントだ! キャー、なんでー?」
 僕が教室を出ようとした時、女子がこそこそと盛り上がっている声が聞こえた。少し立ち止まり彼女達の視線を追うと、そこには端正な顔立ちの男の人が立っていた。そして彼と僕は目が合い、彼は僕に満遍の笑みを向けた。
 にわかに騒然とする女子達。
「え、今小浦と!? なんで!?」
「ちょっ、ありえないんですけどー!?」
「やあやあ、迎えに来たよ!」と彼は昨日と変わらない調子で爽やかに僕の方に向かってきた。
「どおりで見たことあると思ったら、生徒会長だったんですね」
「はは、元だけどね。まあ俺は結構顔知られてると思ってたけど、気づかない君もすごいよ」
「いやあ」 
 彼は『元』生徒会長。でも、任期の時、爽やかな性格とルックス、さらに申し分のない才能が織り成すカリスマ性を存分に発揮し、その人気から今でも生徒会長や会長の愛称で親しまれている。
 そんな彼が実はこの街のヒーローだったということを昨日口止めされたことが記憶に新しい。
「さて、じゃあちょっと時間もらうけど、いいよね?」
「え、あのお昼……」
「青春は待ってくれないよ! さあ行こう!」
 無理やり連れていかれる僕を、クラスの人たちは呆然と、そして好奇心を持って見ていたに違いない。現にこの昼休みの後、女子達の質問攻めという一生に有るか無いかのハーレム状態を味わったのだから。

       

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