翌日の昼休み――

 僕は四時間目が体育だったので少し遅れて屋上へと続く階段を駆け上っていた。後少しだろうか? そう思い上を向くと、突然ヒロミと目があった。「遅れました!」と挨拶するも、彼女はまるで僕がそこに居ないかの如く扱い階段を駆け下りていった。
 様子がおかしいとはもう既にここで気づけた。僕は恐る恐る屋上へと足を踏み入れる。いつも通り会長さんがそこに居た。コンビニの袋を近くに置いて座っていた。後ろ姿はいつもと何等変わりは無かった。だがヒロミのあの態度と会長さんが昨日休んだことを考慮にいれれば、きっと何かがあったのであろうことは確定的。僕は出来るだけいつもの態度を意識しながら、会長さんに声をかけた。
「やあこうらん。昨日は休んで悪かったねえ」
 そこに居たのはいつもの彼だった。少し混乱したが、自分の考えすぎだと結論し、「そうですよ! 今日は頑張りましょうね!!」となるだけ明るく言った。
「変わらないねえ。その態度。変わるのはいつも俺だ」
「へ?」
「いや、変えられたってのが正しいかな? それだけ影響力があるからな」
「あの……なんのことですか?」
 僕は呆然と立ち尽くす。それをよそに会長は天を仰ぐと、そのまましゃべり続けた。
「小浦、君が現れてから俺は変わった。最初は二人で頑張ってた。楽しかった。でも三人になった。君と会って。嬉しかったよ。友達が、秘密を共有できる人が増えて。でも、何故か片隅では君を嫌がってた。多分ヒロミを取られると思ったからかな? 俺の友達を取られると。こんな感情は初めてだった。これは君に出会ったことで生まれた変化だ。そしてこれも……」
 そう言って会長さんはすっと立ち上がり跳躍した。僕に背を向けて普通にピョンと飛んだだけ。これが変化? 僕は首をかしげた。
「これが俺の今の限界」
 しばしの沈黙。その言語を音として聞いてから、その意味を把握するのに時間がかかったからだ。血の気がさっと引くとともに体の末端から震えがくる。
「俺、もうヒーローじゃないんだ」
 笑っているのにぐしゃぐしゃになった顔で会長は、その絶望を僕に打ち明けた。