Neetel Inside ニートノベル
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「起きてっ! ねえぇ……、死んじゃやだよお……」
「……」
 体が重い。視界もぼやけている。俺はどうしたんだ? 目の前には泣きじゃくる男の子。そうだ、俺はこの子をかばって……
「怪我は……ないか?」
「うん……」
「そうか、よかった」
「でも、でもぉ……ヒーローがぁ……」
 俺が……? 俺がどうしたんだ? 体を起こして自分に何が起こったかを調べようとした。が、体自体が動かない。何故? できるだけ首を後ろに回す。そしてチラリと視界に入ってきた光景に俺は絶句した。
「か、下半身が……瓦礫に……」
 道理で動けないはずだ。しかもかなりの量の瓦礫が重なっている様子だ。瞬時に冷静で、そして残酷な判断が俺の中で下された。この男の子にさっきまであんなに虫のいい事を言っておいて……不甲斐ない。悔しい。
「ヒーローぉ……」
 そんな心細そうな顔をしないでくれ。俺だって、苦しくて仕方が無いんだ。本当に君を守りたかった。ヒーローになりたかった。アイツらとまたヒーローをしたかった。もっと多くの人を助けたかった。でも俺は目の前のこの男の子すら助けられない。
 奇跡、起きるなら起きてくれ。俺に力を。もう一度あの力を! また、また誰かを助けられる力を!! 一瞬でもいい!! お願いだ!!!


 だが、俺の願いは無情にも炎に掻き消される。
「ごめんなあ……」
 俺は男の子を安心させようと彼の頭に手を伸ばし、ゆっくりと撫でた。
「う、うわああああああん……ひーろーぉ……」
 ああ、泣くな、泣かないでくれ。俺は、俺はどうすることも出来ないんだ。ああ、せめて、せめて彼だけでも助けられたならどれだけ救われるだろうか。だがそれも今となっては夢よりも儚い。

 死を覚悟した。

『ダダダダダダダダッ』
 すごい勢いで近づく足音。もう幻聴まで聞こえてくるようになったか……。
「会長さん!?」
「……小浦?」
 奇跡は、起きたのか? 
 

       

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