Neetel Inside ニートノベル
表紙

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「私、最近思うんだよね。アイツとの思い出は、夢だったんじゃないかってさ」
 花に手を合わせて、立ち上がり、空を見上げながらヒロミは言った。
「夢?」
「ああ。すごくいい夢。まあ、アイツが消えて最後は夢らしく終わったってことなのかもな」
 ケラケラと笑う。彼女が強がっているのは良く分かる。事件の日以来、彼女は一回も泣いていない。いつも僕い笑顔を見せる。まるで何かを悟られないように。会長さんの最後の言葉が頭をよぎる。
「任せてください」
 小さい声で言った。今の僕にはこれがやっとだ。まだまだ、大声では言えないけど、いつか絶対に言ってみせる。
「ん、なんだよ?」
「なんでもないよ。さあ、熱中症になる前に帰ろう。この後もやることあるし」
「りょーかい。期待してるぜ、新米ヒーロー」
 一瞬強い風が吹いて、僕らの背中を押した気がした。


 ヒロミは夢だといった。だが僕は覚えている。そして夢ではないということも分かっている。あの人はこの街にずっといて、これからも僕らの中にずっといる。もし、いつか僕が彼との思い出を話し、そして最後を締めくくるときは必ずこう言うだろう。


 彼はヒーローでした。そして、今でも彼は僕の、いえ、みんなのヒーローです。

       

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Neetsha