「放課後に校舎裏に呼んで! 古浦って本当にイイヤツだね! ありがとう!」
三日目の昼休みにそう言われて僕は屋上へと押しやられた。先日のことがあって気まずいし、さらにその状況下でのお呼び出しのお願いとか。今すぐここから逃げ出したい。でも、学年のマドンナとの約束を破ったりしたら、もう学校に来れなくなるかもしれない。いやそれならそれで気苦労が無くなる……。ああもう知らん。どうにでもなれ。
空は曇っていた。会長は入り口に背を向けてその空を見ながら一人でパンをかじっていた。第一関門、どうやって声をかけるか。でもその悩みは一気に解消された。
「やあ、こうらん。三日ぶりくらいかな」
「っ!?」
彼は相変わらず僕に背を向けている。なのに先に声をかけてきたのは向こうだった。
「なんで気づいたんですか……?」
「んー、足音? いや、匂い……かな?」
「す、すごいですね……」
「伊達にヒーローやってないからね!」
それってヒーローと関係あるんですか? と僕は笑いながら彼の隣りに座った。ごく自然な形で。毒気を抜かれたというか、これが元生徒会長の実力といったとこだろうか。
でも、すぐに沈黙。僕はただ呼び出しの為に来たのに、頭の中にあるのは別のことばかりだった。ヒロミはあの後またここに来たのか、僕が泣かせてしまったことはもう知れているのか……。
「会長って、もてますよね?」
とりあえず目下の目的だけでも終わらせてしまおう。
「なんだよ急にー? まあ、うん」
パンをかじりながら会長は照れたように言った。
「そこ謙遜するところじゃないですか?」
「いやあ、事実だしなあ」
「じゃ、じゃあ彼女さんとか居るんですか?」
パンを食べる手が止まった。
「……いないよ」
おお、学年のマドンナさん、よかったですね!
「まあ、好きな人はいるけどねえ」
おお……。そりゃあ居るでしょう。もてるのに彼女を作らないのはそれも理由にあるでしょう。……このことは黙っておこう。