もっとも問題は、これが間違っているということなのだが。アンナもそれほど記憶力に自信がある方ではないが、たぶん、合っているはずだった。
アンナはノートを見ながら、その上端とキャスケット帽のつばで挟むようにして、卓上の四枚の羊皮紙を眺めた。羊皮紙には、それぞれアンナが通ってきた道順の候補が記されているのだが、それはひとつだけではなくて何度も何度もサイクルされて書かれている。そうでないと単調すぎるので刺繍にならないのだろう。それを自分でぷちぷちと縫い付けるのかと思うと一気にやる気が収縮してしまいそうになる。が、もう大口を叩いてしまったので退くに退けない。
まあ、ヤマカンで張っても四分の一だ。ちょっと難しいジャンケンに過ぎないと思えばいくらか気も楽だ。こういう土壇場で慌てたり、気負うようでは話にならない。鍛錬不足も甚だしい。一番しっかりしなくちゃいけない時にこそ、チャランポランでいられるぐらいの気概がなければ、なんにもできはしないのだ。なんにも。
アンナは改めて、候補になっている模様の最小単位を見比べた。