Neetel Inside ニートノベル
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魔道普岳プリシラ
第三十一章『続・最終戦争論』

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 数日後――
「やはり、連中は軍事演習を始めたのか」
「そのようっス」
山城アーチェとヴィクトリアは会合を設けていた。
「こうなってくると非常事態宣言を出して、戒厳令を敷く事も視野に入れねば」
ここで時間を掛けて、周辺国家の呼応勢力を煽る狙いだと、二人の見解は一致していた。
「時間を掛けるとマズイっスよ? 袋叩きになるっス」
ヴィクトリアは時空の弥生か彼方にある異世界、ディメンションⅩの出身で、母親譲りの
細い目と銀髪が印象的で、語尾に、何々っス、とつけるのがクセだ。母親が天使である為、
人間よりも寿命が長い。もっとも、身体の成長速度も遅い。家臣の中でも古株であり、故
に、若いナリに似合わず、王室の御意見番的存在だった。
「要は戦争犯罪者として、訴追されなければ良いのだが」
うーん、と考え込む山城アーチェ。どこかで隠遁できるならするのだが、ラティエナ王国
を解体した後にも、このままでは戦争が起こらないと言う保証はない。その際、空戦機甲
部隊には、勿論、召集令状が出るだろう。
「不確定要素が多すぎる」
「ラティエナ王国の分割統治を、教皇庁が主導で行う筋書きが読めるっス」
一応、相手は陸相なので、山城アーチェは閣下と呼ぶべきなのだが、この二人は士官学校
の先輩後輩で仲が良かった為、ヴィクトリアは普段の口調で話していた。勿論、公の場で
は、この様な話し方はお互いにしない。
「『法王』 NATO・ルーン・響としては、手腕が問われる訳だな」
「こちらが国境へ向けて軍を派遣したら、反戦派がデモを決起……頭が痛いっス」
相手は、中々、政治手腕に長けている。自由民主主義がデモクラシーによって芽生え、近
代戦争に於ける総力戦の果てに辿り着いた、マスメディアによる支配。現代社会に措ける
倫理観の発達は、最早、英雄をサディストと形容し、単なる人殺しとしてしか見られない
様にしていた。歴史ロマンは、多くの人間にとってはフィクションであって、しかし、エ
ンターテイメント性を孕んでいるが大衆娯楽の一つに過ぎない錯覚を、社会全体が支持し
ていた。

       

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