Neetel Inside ニートノベル
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魔道普岳プリシラ
第三十三章『布陣』

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 同年同月――
「無条件降伏、ですか?」
山城アーチェが普岳プリシラに聞き返した。
「最期通牒らしい。降魔戦争の責任を軍事法廷で問うつもりや」
戦う他ないのかも知れない。フリートエルケレスのクルーは一抹の不安を覚えた。
「地上軍の配置は中立地帯のラストタイケヌサ城を拠点とし、空中艦隊は全戦力を持って
高雄の艦隊を食い止める準備に掛かるっス」
北方以外の兵力が手薄に成るが、ある程度は、こちらの兵力が消耗するまで攻めては来な
い見通しが立っていた。
「漁夫の利……それを得るのは『法王』 NATO・ルーン・響や」
ところで、と普岳プリシラが話を変えた。
「何でしょう?」
「金剛吹雪の事なんやけど」
ああ、と山城アーチェは意を解した。
「御心配なく。参謀部付きとします。危険な前線へ出すことは致しません」
普岳プリシラはホっと胸を撫で下ろした。
「この歳で未亡人は嫌さかい……」
「事ほど左様に、ラティエナ王家の将来も充分に慮っているのです。御信頼頂きましょう」
戦争は避けられない。最早、開戦は時間の問題だった。

     

ラティエナ王宮――
「嫌なのであります、参謀部つきなんて絶対に!」
「そう、言われてもな……」
金剛吹雪は山城アーチェに抗議していた。
「自分は前線に出たいのであります。そして、手柄を立てたいのであります。教官殿の様
に」
「しかし、これは姫様のご希望で陛下が決めたという事だし、私には……」
滅多に見せない金剛吹雪の気迫に、山城アーチェは戸惑った。
「今の教官殿ならなんだってできるハズであります! 降魔戦争の英雄じゃないですか…
…負けたくないんです、若葉に! 彼は、今度の戦訓で二階級昇進し中尉になると聞いた
のであります。そうしたら、自分は姫の婿に相応しくないのであります」
「ん? そういうことか! なら、お前も中尉に――」
「実質的には、自分は何もしていないのでありますっ。唯、魔王の霊体を消滅させただけ
であります! ……御免でありますよ、お手盛りの昇進など! そんなことばかりだから、
若葉派がのさばるであります。いつまでたっても、所詮は馬の腰だって……」
金剛吹雪は珍しく涙目になっていた。何か事情でもあるのだろう。
「……わかった、ヴィクトリアと相談してみる。どうなるかは分からんが」

       

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