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魔道普岳プリシラ
第三十八章『瓦礫の戦争交響楽』

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 ここは帝国の軍事拠点、ウォー・エンブレム基地――
「高雄執政官、一つお尋ねしてもよろしいでしょうか?」
「うむ、何かな?」
帝国・参謀総長の松風ストックウェルは、高雄に通信で尋ねた。
「皇帝陛下の座乗艦、ガルフェニアが戦闘地域に出ています。お出しになったのですか?」
「陛下が望まれたことだ。兵は鼓舞され歴史的勝利を間近に見られて、陛下も満足だろう」
この二人は特に対立している訳ではない。策略的なモノで主君を前線に配置したのではな
く、霧島薙に流れるスウィネフェルドの血がそうさせたのだ。
(戦馬鹿とはよく言ったもの……)
「大丈夫、なのでしょうか?」
「ガルフェニアは我が帝国艦隊とは別行動。教皇庁の本陣に配置してある。敵は、我が艦
隊に総力を割くと言う情報をキャッチした。作戦は筒抜けだ。これは、唯、ラティエナ王
との戦いであるというだけではない。この陣立ては、まだまだ、先の勝利を求め、帝国の
戦を積み上げる為の布陣だ」
やはり、傀儡でしかないのだが、今、死んでもらっても、困る。問題はどこを落とし所に
するか。この戦争の終わりに、どのようなカタルシスがあるのかは分からない――帝国は
迷走していた。

     

 奮闘中の人――
「しかし、やはり、侮りがたい。普岳プリシラ姫。御前会議の内容をリークさせてまで、
敵を欺くか。総力を挙げて、先ず、高雄の艦隊を叩く等と……心しておこう、之からの為
に――」
今や、若葉から受け継いだパーソナルカラーの赤に因んで赤い彗星と呼ばれる、山城アー
チェ専用ゴースティカル・シャルドゥエ機甲は、レムレースの港を攻撃していた。
 ちなみに、若葉専用ライゼッタのアサルト形態とバスター形態は、大淀葉月が憑依しな
ければE効率不足で、山城アーチェ搭乗に当たって外す必要があった。ミノフスキー後退
翼も推進機関のみの限定仕様。それでも、通常の三倍の速度で、戦線から戦線へ移動する
機動力を有していた。

     

 帝国軍モアイ戦艦ワルキューレのメインブリッジ――
「レムレースが攻撃された!?」
「各バンチのベイが集中的に攻撃を受けました! ベイの機能は、あらかた、失われた模
様です」
高雄は口元に手を当てて考えた。
「……どういうことだ? 敵は、艦隊戦に総力を挙げてくると言う情報じゃなかったの
か?」
「どう致しますか? レムレースが、更に、全面攻撃を受ける恐れがあります。艦隊を守
備に割くべきでは?」
(敵の霍乱……か)
「『法王』 NATO・ルーン・響猊下に任せておけ。我々は、教皇庁の入手した情報にも
とづいて作戦行動に入ったのだ。何か考えがあるのだろう」

     

 クックルーン本陣――
「レムレースのベイを、敵が?」
「攻撃は、一過性のものかと思われますが、被害は甚大のようです。レムレース政府は救
援を要請して来ていますが、如何、いたしますか?」
クックルーン『法王』 NATO・ルーン・響は昼食を食べていた。
「はて、話が違うな……」
「高雄執政官に緊急指令を出し、一部隊をレムレースに引き返させては?」
ナプキンで口を拭きながら、『法王』 NATO・ルーン・響は言った。
「そうもいくまい。彼の正面には、ラティエナのほぼ全軍がいる。一艦、足りとも割きた
くはないだろう」
しばし、熟考。
「さりとて、無視はできん。ベイを潰されては、レムレースは丸腰も同然だからな……移
動要塞ガルフェニアと、重巡ウペラ・レ・バルガー級の半数をレムレースに回せ。後、市
民の救難の為に、補給艦と強襲揚陸艦を相当数」
「はっ!」

     

 旗艦ガルフェニア――
「この風、この肌触り、この匂いこそ、戦争よ!」
霧島薙の気持ちは高ぶっていた。この年端でも初陣ですらないが、本能が行く手を遮る彼
奴らを倒せと轟き叫ぶ!
(このガルフェニアが高機動化した暁には、勇者など叩いて見せるッ)
「艦載機を全て出せ。出し惜しみはするな!」
ガルフェニアの艦載機は空戦機甲に運動性は劣るものの、指定方位射撃で弾幕を張る垂直
離着陸型の大型有人機で、燃料は魔法力ではなく内燃機関を積んでいた為、航続距離など
はこちらの方が上だった。惜しむらくは、魔力カートリッジ形式では、妖精を憑依させた
場合と比較して、魔砲のエネルギー効率が段違いな点だ。空戦機甲が多数のモンスター戦
を想定しているとすれば、帝国のロボット、ナルゲスタッツォ機士団の用兵思想は、数対
数の戦争を想定しているものだった。
「魔王ゲルキアデイオスを倒せたのも、連中の空戦機甲とやらの継戦能力にある。陣形さ
え固めていれば、数で上回る我が、精強な軍団が、そう易々と、崩されまいよ」
血みどろの戦いが始まろうとしていた。

     

 ここはフリートエルケレスの作戦室――
 白鷹、ラティエナ王、普岳プリシラ姫の三名が戦況を見守っていた。
「ヴィクトリア中将の艦隊が、絶対防衛圏を出ました。敵艦隊との距離は百二十キロ。間
もなく接触するものと思われます。既に、艦隊は戦闘隊形です。敵艦隊も両翼を展開中。
後続の敵主力、クックルーン艦隊は、まだ……あ、二手に別れました! 一隊はレムレー
スに向うようです。我が軍の陽動作戦に乗ったようです。これで、彼我の戦力差が一変し
ます。ほぼ、二対一です」
普岳プリシラ姫は頭を抱えていった。
「ああ、じれったい! 父上、ウチは間違ってたわ。地上じゃなくて空軍配属を希望する
んやった。こんな大事な時に、こうやって、唯、見ているだけしかできないやなんて……
あのルリタニアとか言う素人のお嬢ちゃんでさえも、今、この時、空戦機甲を装着してど
こかの戦場に行くんやろ。ああ……」
「落ち着け、世の中には犬死しても良い者と、それの許されぬ者とがおるのじゃよ。精進
して時が至るのに備えるのじゃ」
これを聞いたラティエナは激昂した。
「父上! お言葉ですがっ、ウチには、この戦争の兵士達の死が犬死にだなんて到底――」
モニターが『ザ、ザーッ』とブレ始めた。
「ミノフスキー反粒子が散布されました。画像状態が急速に悪くなっていきます。戦闘開
始です」
『バッ――』
 画面が強烈に光った。
「初弾は我が艦隊です。有効射程範囲、ギリギリのところです」
白鷹が状況を説明する。
「射程は敵の方が長いんやろ?」
「その筈です。これも陽動作戦でしょう。火力では劣りますが、我が軍のルミナ・ドラコ
ニス級は、船体断面の小ささのために被弾経始が良好であり、且、又、ノズル配置から来
る運動性能を以て容易に回避行動を……」
『――バッ!』
「わ! な、なんや!?」
「一隻被弾しました。直撃のようです」
普岳プリシラ姫は耐えかねて、ヒステリックを起こした。
「どの艦や! まさかヴィクトリアのキグナス!?」
普岳プリシラは白鷹を怒鳴りつけた。
「当たったやないか! なにが被弾経始や、運動性能や! もう味方が一隻、やられたや
ないか!」
「普岳プリシラ、落ち着くのじゃ! 見苦しいぞいっ」

     

 クックルーン旗艦ダラカニ艦橋――
「攻撃開始です、閣下!」
『法王』 NATO・ルーン・響はメインブリッジに入った。
「ん」

     

雌雄を決する艦隊決戦――
「ノーチラス爆沈!」
「インビンシブルも被弾損傷!」
「エンタープライズ、機関をやられました!」
ヴィクトリアは艦橋から指示を発した。
「ひるむなぁ! 応射しつつ散開転進っ。ここが勝負どころっスよ、遅れるな!」

     

 帝国軍旗艦ワルキューレ艦橋――
「悪いが、緒戦で全滅だ。ラティエナの奴輩は……」
高雄執政官は、戦況を見つめていた。
「敵は、急転退却、隊列を乱して四散した模様! 殆ど、総崩れですっ。唯、ミノフスキ
ー反粒子の干渉で状況が充分把握――」
「まだ応射してきている艦があるっ。それに集中砲火を浴びせろ!」

     

 キグナス艦橋――
「ハイウインド被弾! 尚、応戦中――なるも、ヴィクトリア司令。本艦はもう駄目です。
御健闘をっ!」
「分かった、貴様らの死、無駄にはせんぞ……転進、急げぇ!」
ヴィクトリアは目尻が熱くなるのを感じた。雨垂れは血の雫となって、頬を伝い堕ちる。
「殿軍諸艦の奮闘を無駄にするなっ、散開! しかる後、反転! 目標、敵艦隊主力、ク
ックルーン本隊。全艦、全速。かかれぇ!」

     

再び、ダラカニ艦橋――
「ブリッジ、ブリッジ、敵艦隊接近の報アリ。誤報と思われますが、警戒の強化を」
「敵だと? 敵は、今頃、高雄の前で断末魔だろ。我々が付くかどうかだよ、問題は」
この時、『法王』 NATO・ルーン・響は席を外していた。艦長は定見のない男だった。
「それより楽しみにしていろ、戦勝祝賀会はエルケレス城だ。謁見の間で無礼講の宴会だ、
どうだ?」
この、数分後、『法王』 NATO・ルーン・響がメインブリッジへやってくると、クルー
達は敬礼をした。
「ああ、そのまま、そのまま。それより、どうだ? 敵は……ん? なんだ、あれは?」
一同は驚愕した。何と、前方の視界に敵の艦影が移っているではないかッ――

     

 ――天佑は我にあり!
「ってぇぇぇ!」
ヴィクトリアの乗るキグナスの四十六センチ・ショックカノンが火を噴いた。
「撃て、撃ちつくすまで、撃て! 奴等のヤワな横腹をブチ抜いて、息の根を止めてやる
っス!」

     

 特別機動大隊輸送船ゲルニカ格納庫――
「ヴィクトリア閣下が敵を縦に強行突破した。敵艦隊は完全に隊列を乱している」
「よしっ、全機発進! 全速にて戦闘空域に急行!」
不知火率いる空戦機甲部隊の初陣である。
「このシチュエーションは訓練通りではなくて? 肝心、要で遅れてはならなくってよ。
私の後に、お続きになって!」
不知火も今回は空戦機甲要員として部隊を率いる事にした。TS砲をバラ幕より、各自個
別で応対、撃破した方が有効な戦略と踏み切った。御前会議ではヴィクトリアが将官の前
に山城アーチェと二人を呼び出したが、出撃要請を総司令としてヴィクトリアが出したわ
けでも、級友として普岳プリシラに頼まれたわけでもない。空戦機甲課の正念場だと魔法
学園の生徒として、彼女は自ら出撃を決行した。黒魔術を扱うものに、レーザー・ビーム
と言った光学兵器は通用しない(ビームは厳密には熱源兵器だが、光を熱源とする) 何
故ならば、黒魔術師の展開する深淵な闇で構成される魔力障壁を、精霊元素抜きで貫通さ
せる事ができない。実弾兵器もオーラバリアを突破する事はない。聖属性を伴う光でなけ
れば、空戦機甲に搭乗した黒魔術師を打ち落とす事はできない。空戦機甲のギミックによ
って、近接物理戦すら、魔法力に比例する為、彼女は後方支援型ではない。霊的な力を手
にした屈強な剣士ですら、例え、支援魔法で中空で対抗しても、一薙ぎで倒して退けるだ
ろう。
 若葉は不知火が前線に出ることは、むしろ、賛成だった。フリートエルケレスの電磁バ
リアの届かないむき出しのTS砲に、敵が集中砲火を浴びせる危険性が高い。TS砲を使
うとなれば、艦を降魔戦争の時と同様に、前線に配置しなければならない。用兵として正
しい選択とは言えなかった。軍艦校舎の艦長は陛下でも姫様でも、閣下でも、教官でもな
い。不知火の目の回復具合から、球数にも限りがある。こればかりは軍と産にも従っても
らう。

     

 形勢逆転――
「こちら重巡ウペラ・レ・バルガー級三番艦より伝令。『法王』 NATO・ルーン・響猊
下に、お目通り、願います! 我が艦隊は、レムレース目前の空域で包囲されています。
敵艦船の姿はありませんっ、攻撃してきているのは空戦機甲です! 応戦する術がありま
せん、速い機体です!」
ゲロニカにレムレース戦線より伝令が入った。
「窮鼠、猫を噛む……か。噛まれたな。こっぴどく。ガルフェニアに伝令を回せ、殿を任
せると」
こうなると、頼みの綱は堅牢な移動要塞ガルフェニアだけだ。
「先に、ガルフェニアより伝令。貴艦は戦闘空域より離脱されたし、との事」
(良い読みだ、流石、大帝の落とし子、と言うべきか……)
「相、分かった。艦長、敵艦は反転して、又、攻撃してくるぞ。全艦回頭! 総員戦闘配
置、砲科班、各砲座へ急げ!」
(逃げ切れる……か?)
「回頭後、すれ違い座間に一斉謝してそのまま本国へ引き返す」
「さ、左舷底部に砲撃!? 下から来まぁす!」
――何っ!
「腹側に、敵艦!? まさか――」
(ラティエナ、恐るべしッ!)

     

 ゲルニカ艦橋――
「中尉殿、不知火中尉殿! 反ミノフスキー粒子の拡散値がレベル・フォーを割ります。
限界です、艦に戻ってください。『法王』 NATO・ルーン・響の旗艦は逃しましたが、
目標は八十パーセント達成、上々ですよ」
『ザザーッ』
「雷暗と――収容」
『ジジ、ザァ……』
「望月先生は――」
『ガァァ……』
モニターが回復しつつあった。
「言うことを聞いていないのは、アンタだけですよ。中尉殿。」
「――分かりま――わ」
『ジィィ、ガリガリ……』
「すぐに――」
『ピュー……』
「やれやれ、ラティエナ十字勲章の勇者と組むのはカラダに悪いですなァ、艦長殿。しか
し、案外、良い所もあるじゃないですか。一応、部下のことなんかも、気遣うっていう辺
りなんざ……はっきり言って、もう少し、イヤな子娘かと思ってましたよ」
彼の名は八重山。妻子を国元へ残しての職業軍人だ。後に山城アーチェと命運を共にする
事になるが、まだ、今の彼はそれを知る由もない。

     

 一方、レムレース戦線でも、教皇庁軍の敗北が決定的となりつつあった。しかし、それ
でもガルフェニアは孤軍奮闘していた。
「弾幕薄いぞ、何をやっている!」
(最早、これまで、か……)
「上空より敵が突入してくるぞ、白兵戦の準備をしろッ」
「陛下! 白兵戦とは機械師団の事ですか?」
霧島薙は目を瞑って『フッ』とだけ笑って言った。
「馬鹿を言うな、人間のだ」

     

 ガルフェニア上空――
「艦が後退しないわね、いい覚悟だわ」
ルリタニアはナルゲスタッツォ機士団を蹴散らし、ガルフェニアに取り付くことに成功し
た。
(外は山城アーチェ先生に任せて、ここは私が――)
「一人では危険なのであります」
「アレは私様の獲物よ。手柄は譲らないわ」
外壁はとてもじゃないが破れそうにない。ハッチから突入する他なかった。
「後部甲板から私は突入するわ、貴女はメインブリッジへ」
「了解なのであります」
死闘が始まった。

     

 数時間後――
「こちらルリタニア。大佐、聞こえますか」
ガルフェニアの中心部へ向かうルリタニアは、山城アーチェに通信を入れた。
「良好だ、ルリタニア」
「これより冥王の間へ向かいます。しかし、皇帝の処遇の件、どうすればいいのか、指示
を」
相手は敵と言えど、まだ子供。殺すのは躊躇われた。
「造ってやれ、逃げ道を。寛容になれるのは、我々、勝者の特権だ」
「了解。大佐ならそう言うと思っていました」
戦勝が確定的となった山城アーチェは上機嫌らしく、ふふん、と鼻を鳴らした。
「私は、慈悲深いのだ」
その後、遭遇した最後の敵、霧島薙親衛隊こと、ロイヤルガードの二名を撃破し、ルリタ
ニアは冥王の間へと入った。部屋は静まり返っている。ドアを開くなり、ルリタニアは開
口一番、こう告げた。
「皇帝陛下! ルリタニア=秋雲、四海に擾乱が継起する今般の情勢を危ぶみ、陛下と社
稷をお守りするべく、憂国の義士を募り参上仕りました!」
 ルリタニアの声が大広間に響き渡った――重く、そして時間にしては短かったが、それ
はルリタニアにはとても長く感じられた。
「……フフッ、立派な戦い方だったぞ、諸君!」
玉座からゆっくりと立ち上がる霧島薙。
「だが、よく見ておけ。敗者の定めがどういうものか――」
彼女は腰の剣を抜き――
「戦に敗れるとは、こういうことだ!」
『ザシュ――』
 自らの命を絶たんとした彼女のショートソードの刃を、金剛吹雪が素手で握り締めた。
「憂国の義士が聞いて呆れる。おい、貴様。いつから其処にいた」
「自分は陛下の、お望みのままに……」
パキンッと金剛吹雪は、刃を素手でへし折った。
「まさか、用いろと?」
「その器量はないのでありますか?」
 こうして、魔法学園は霧島薙の確保に成功したのである。

     

 キグナス艦橋――
 ヴィクトリアは戦いを終えて、こう述べた。
「撃ち方しばし止めっス、消え逝く大宇宙の戦死諸氏に対して、黙祷ぉ!」

     

 フリートエルケレス作戦会議室――
「すごい……ヴィクトリアの奴、完勝や」
普岳プリシラは白鷹に訂正した。
「言った通りや。我が艦隊は素晴らしい、無敵や!」
「まだ判らんぞい、普岳プリシラ。敵には、まだ逆転の可能性がある。先発艦隊をこのま
ま突入させれば、丸腰に等しいラティエナ本国はなすがままじゃ」
普岳プリシラは動揺した。
「肉を斬らせて、骨を断つ戦法。それを採るならば……」
「良い知らせです。高雄の艦隊は本艦の前方四十キロメートルにおいて、回頭しました!」
白鷹の報告を普岳プリシラは喜んだ。
「やった、これで本当に勝ちやな、父上。今度はウチだって働きます。ウチも王国軍人や
から! 何でも言いつけてください、ウチはやりますから!」
「普岳プリシラ!」

     

ラティエナ王は娘の気勢を制した――
「……ッ」
「お前はまだ若い……いや、幼い。戦争が恐ろしいモノじゃということが判っていない」
ラティエナ王は、娘の身を案じて言ったのだが、普岳プリシラは思わず怯んでいた。
「任務については、三軍の長たるヴィクトリアの指示を待つことじゃ。あれは良く計らっ
てくれるじゃろう。くれぐれも軽挙妄動はせぬことだ、わかるな」
王は白鷹に指示を告げた。
「至急、前線の金剛吹雪に訓令じゃ! 降将霧島薙に対し、礼を失することのないように、
と……」

       

表紙

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Neetsha