Neetel Inside ニートノベル
表紙

魔道普岳プリシラ
第五章『死の囚人』

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 ――翌日。
「魔王ゲルキアデイオスを復活させてくれだと?」
山城アーチェは顔を顰めた。
「そうです、そうすればレベルが上げられると大淀葉月が言っています」
そうは言うがな、と言って椅子を回して職員室の窓から見える空を見つめた。
「決して血迷っただとか、また、殴られに来たとかでは有りません」
でも、また殴られそうだ、と若葉は思っていた。不知火も同伴してくれていれば心強かっ
たのだが、生徒会の仕事が入ったらしく、それは、無理だった。だから、昼食を食べ終え
た後の昼休み、彼は大淀葉月を連れて職員室を訪れた。
「分かった、善処してみよう――」
「本当ですか!」
意外な返答に若葉は驚いていた。
「もし暴れたら再封印すれば良いだけだからな。世界のバランスが保たれている現状なら
ば、それは、比較的、容易い」
大淀葉月は深々と頭を下げた。
「ありがとうございます、なのですよー」
次の授業があるから、お前ら、さっさと帰れと言い残し、山城アーチェは職員室を後にし
た。
「上手くいくと良いね」
階段を上りながら若葉は言った。
「そうなのです」
さて、次の授業は世界史だ。小テストをするらしいので教科書を適当に眺める。そこに生
徒会の仕事を終えた不知火がやってきた。
「今日の小テストは丁度、魔王ゲルキアデイオスが覚醒して超科学文明を滅ぼした辺りが
範囲でしてよ」
大淀葉月の得意分野だな、と若葉は思った。不知火に、山城アーチェ教官とのやり取りを
伝えた後、二、三会話した所で始業ベルが鳴った。小テストのデキは自分なりには頑張っ
た方だったが、不知火ヤ大淀葉月との差は、越えられない壁のようなモノを感じた。
 そんな平穏な学園生活が、数日間、続いた。北の洞窟に派遣されていた調査隊の報告で
は、鉱物資源が眠っている事が分かり、その利権争いに学園が巻き込まれたり、東の森に
今だ生存しているレッサーデーモンの残党を始末したりと、やるべき事はそれなりに残っ
ていた。
「事後処理って、これはこれで、案外、面倒ではなくって……はぁ」
完全無欠の生徒会長も東奔西走で疲れが顔に滲み出ていた。
「少しは休め、寝不足は美容の敵だ」
 フェアリーとの憑依状態のデータも測定があり、訓練に事務処理と、生徒会長は引っ張
り凧だった。何が彼女をここまで突き動かすのだろう、そう思った若葉は不知火に尋ねて
みた。
「此処のトコ、精力的に頑張ってるけど、何か理由があるの?」
きっと何か彼女にとってメリットがあるのだろう。
(できる事なら手伝うんだけどね……)
「北の洞窟に鉱石が眠っている話は聞き及びなくって? 貴方もアレが欲しくはなくっ
て?」
「え、単なる鉄鉱石じゃないのか?」
確か、探査対はそう公表していたハズ。
「それは表向きの発表で、確かに、鉄クズも出ない訳ではなくってよ。しかし、もっと深
い断層に魔石が眠っているのを探知機で発見しましたわ。それも、割と小物ではなくって
よ」
成る程、それを加工して装備すれば魔力が格段と上昇する訳か。
「タリスマンでも作るの?」
「モノが小さければ指輪とかでも宜しくてよ」
地表から魔石探知機を使うと面積は分かっても体積までは分からない。指輪を作ると言っ
てる事から察するに、面積は大した事なかったのだろう。
「魔導士としての強さが、一ランク、上がる事が見込めなくって?」
 放課後、立ち入り禁止となっている北の洞窟に二人はやって来た。許可をもらっていな
いので空戦機甲は使用できない。が、敵は既に掃討したので、その必要もないだろう。一
応、用心に越した事はないので、若葉は、威力の落ちた宝剣ヴレナスレイデッカを携えて
いる。しかし、それも杞憂だったようで、目標の魔石が眠る地点まで難なくやって来れた。
「後は此処を掘るだけか……何メートルぐらいあるの?」
「十メートルと、少し、深いから手作業で掘るのは可能ではなくってよ。ゴーレムを下の
土で作って、地面を移動させた方が賢明ではなくって?」
そう言って、魔方陣を展開する。
「あれ、不知火って闇属性じゃないの?」
初めて会った時からそうだが、闇属性の魔法陣を使っている場面しか見た事がない。
「私が、複数の属性を会得してるように見えなくって? 幼少からの英才教育の賜物です
わね。もっとも、光属性だけはモノにできなくってよ。それが、つまり、勇者の器ではな
くってよ」
 光属性と闇属性は相反する為、同時に魔方陣を展開すると、つまり、相殺しあって魔法
を使えないと言う事だから、規格外の魔力を持つ彼女だからこそ、その道は極める事がで
きなかったんだろう。土塊からゴーレムが生まれ、ゴーレムは不知火の指示に従い、移動
する。するとそこには深さ十メートルの縦穴ができあがり、その底には、魔石が埋まって
いた。
「おっ! アダマンタイトだ! やったね、不知火」
二人はハイタッチして喜んだ。その時、洞窟内に二人が、いつも、よく聞き及ぶ声が鳴り
響いた。
「貴様ら、そこで何をやっている!」
(マズイ、人に見つかった)
 しかも、この声は二、三発の拳を覚悟して於いた方が良さそうだ。
「お言葉ですが、教官。このレアメタルは我が校に所有権があるハズではなくってッ」
 不知火が山城アーチェに向け、杖を構える。不知火は本気だ。
「成る程、貴様ら、グルッグルにグルだな。なら、次のセリフは慎重に選んだ方がイイぞ? 
これも我に命ぜられた任務とあれば、刃を向けるのが、例え、教え子であろうと容赦しな
い」
空戦機甲こそ装備していなくとも、山城アーチェは訓練された軍人だ。戦うのは得策では
なかった。
「諦めよう、不知火。少なくとも僕は教官と戦うつもりはないよ」
「な、なんですってー!」
若葉は宝剣ヴレナスレイデッカを放り投げ、両手を万歳して投降の意を表した。
「良い心掛けだ」
不知火はたじろいだ。
「さあ、どうするんだ? 生徒会長。このままだと軍法会議モノだぞ」
口惜しいが、このまま戦っても勝算のある相手ではない。
「はぁ……こればかりは仕方がなくってよ」
不知火が構えていた杖を降ろした。
「アダマンタイトの所有権の話は私に任せろ。何とかしてみせるから、そう落ち込むな」
不知火の肩にポンッと手を掛ける。
「約束は破られる為にあるものではなくってよ?」
不知火は恨めしそうに山城アーチェを見た。
「ああ、分かった。約束だ。用が済んだのなら、お前等はさっさと家へ帰れ」
言われるままに、二人は洞窟探索を終えて、出口へと向かって歩いた。
「まぁ……何だ。見つかった相手が教官だったのは不幸中の幸いだったね。兵隊に見つか
ってたら、戦闘は必至だったし」
落ち着いて考えれば、戦わなくて済んだ事を喜ぶべきだろう。
「ふん、若葉なんて生徒と教師の禁断の愛にでも目覚めてしまえば宜しくてよ」
不知火は、相当、頭にキている様だった。
「悪かった、済まない。いつかこの穴埋めはきっとするから、機嫌を直してよ」
『まぁいいですわ。魔法の使えない貴方にこの気持ちはわからなくってよ――』
 等の、愚痴をブツブツ言いながら洞窟を後にする不知火。ここまで強さに執着する理由
には、何か事情があるのだろう。若葉は聞いてみたい気もしたが他人のプライベートに踏
み込むのも、気が引ける。しかし、自分達は共に戦った仲間ではないだろうか。一歩、踏
み出して聞いてみる事にした。
「不知火、君のその向上心はどこから沸いて来るの?」
不知火が足を止めた。
「……敵討ちですわ。私の父は魔物との戦いに敗れて亡くなってよ」
ほぼ、想像通りの答えが返ってきた。全ての争いは怨恨に根ざしている、当然の事。
「しかし、復讐に捕らわれ過ぎて若い頃を根暗に生きる事はないよ。死んだ父君もそれは
望まないハズだ。少しぐらい、普通の年頃の女の子のように振舞って、青春を謳歌しても
良いと思うよ」
根暗は言い過ぎかも知れないが、不知火の容姿を考えれば、狂戦士の日々は勿体無い。
「少しは人生を楽しまなければ、山城アーチェ教官みたいな鬼になってしまうよ」
「私は今の日常を後悔したりはしなくってよ。それに、友人にも恵まれていると思ってい
てよ」
(友達か……僕も誰かを助ける為なら不満はないかな)
「それもそうだね、クラスメイトにしたって、良いヤツばかりだ」
「ですわ」
それは本当にそう思う。洞窟を出たところで彼等を待っていたのは、軍の査問委員会など
ではなく――過ちも痛みも、鮮やかな一瞬の光へと導いて。
「会長、首尾はどうだったんですか?」
「先に、山城アーチェ教官が入って行かれたんですが、何か、あったんですか?」
そこには二人のクラスメイトと、それだけではない。実践学習で合同のクラスの生徒や生
徒会役員の上級生まで居た。人集りに囲まれながら、二人はこの学園に襲来する危機こそ
が悪なのだと確信した。
(もう迷わない――)
「眠っていた魔石はアダマンタイトで、山城アーチェ教官が軍に掛け合うそうですことよ」
『軍が、何だ』『俺達の勝利だ』等と生徒達が騒ぐ。聞けば、始めは数百の兵士が待機して
いたらしいが、皆が、抗議して追い払ったらしい。
「やれやれ……」
洞窟の別の出口から外に出た山城アーチェは影ながらその様子を見ていた。自分の教え子
達が大人になるまでのモラトリアムの贖罪に、どこか懐かしさを感じながら……天まで駆
け上がった、あの頃の虹が欲しい。適えるのさ、誰もが、望んでいた、夢を――翌日、ア
ダマンタイトの発掘が行われていた。作業は簡単なものでロープで吊り上げるだけだった。
アダマンタイトをロープで縛り機械がそれを引っ張り上げた瞬間、事件は起こった。
「崩落事故?」
昼休み、その知らせが不知火達の元へと届く。
「地盤でも緩んでいたのかな?」
これは、危機一髪で教官に助けられたな、と若葉は思った。
「地盤が緩んでいたら、ゴーレムは作り出せなくってよ。きっと、何か裏がなくって?」
うーむ、と皆が考え込む。そこで、始業ベルが鳴った。山城アーチェは教壇に立つや、否
や、生徒に告げた。
「空戦機甲部隊は全機出撃だ、目標は北の洞窟。巨大アリ地獄、通称、スター・ゴライア
スを駆除するっ」
『ワー、ワー!』
と歓声が起こる。皆の士気は昨日の今日で、激しい高まりを見せていた。
「先ず、昨日まで通っていたルートは落盤で進めない。よって迂回ルートを通る事にする」
指示通り、山城アーチェに三十名の勇士が続く。敵はボス級とは言え、一体なので若葉は
ラティエナを置いて来た。これだけの戦力でまさかピンチにはならないだろう。洞窟内が
迷路状なのでアカシックレコードラインも装着していない。通路が枝分かれしている。そ
こからは二手に分かれる事になった。片方は山城アーチェに率いられ、もう片方は不知火
が隊長を務めた。若葉は不知火に着いて行く事にした。唯、広い部屋に出る。その中心は
砂で覆われた擂鉢状になっていた。それは、まさに、蟻地獄だった。
「スター・ゴライアスを捕捉しましてよ。攻撃開始ですわ」
誰かが共謀している可能性は低いと判断、レッサーデーモンの時とは違って不知火は山城
アーチェに通信を入れた。
「私達が到着するのを待て、強行は避け給え。生徒会長」
山城アーチェの静止を無視して、不知火はライフルの照準を目標に定める。
「エネルギー充填百二十パーセント、これで、御終いではなくって?」
雷鳴が鳴り響き、轟音と共に爆風が巻き起こる。
「やったか?」
山城アーチェが若葉に無線で連絡を取ろうと試みる。
「分かりません。が、あの爆発だと無傷では済まないと思います」
「そうか……む、どうした、不知火! 応答しろ、不知火! ……クソッ、不知火が無線
を切っている。地中に逃げられるとアレは厄介なのだが」
無線を切っているって、マジなんだ。意地でもアダマンタイトを手に入れるつもりか……
気負いすぎて、足元を掬われなければ良いけどね。若葉はブースターに点火し、不知火の
傍まで飛んで、静止する。状況を把握するように説得するも、無駄だった。
「巣食われるのは、いつも足元なのだわ!」
スター・ゴライアスが反撃すべく、その姿を地上に現す。
「デカい!」
他の生徒達がプレッシャーに気圧されて萎縮する。
「集中砲火で一気に沈めますわ。各員、構えはよくって!」
不知火がスター・ゴライアスを惹き付けながら指示を出す。
「今ですわ!」
『ドゴォォォオン――』
(殺ったのか……)
『ゴゴゴゴゴ……』と、地響きが起こる。
「地中に潜って、間一髪、避けたのか」
(嫌な予感がする――)
若葉は直感的に判断した。
「不知火、危ない!」
考えるより、先に、体が動いていた。勢いよく地中から飛び出してきたスター・ゴライア
スの脚部を、二人は回避する事に成功した。押し倒す格好になってしまって、ちょっと、
気不味い。
「レディの上にいつまでも乗っかっているのは失礼ではなくって!」
「す、すまない」

     

 お互いに異性に対して免疫がなく、緊張していた。特に、不知火の動揺は大きかったよ
うだ。鼓動の高まりが抑えきれない――
「こ、これが済んだら、よく、覚えておくが宜しくてよ!」
最早、何を喋っているのか分からない。

     

 全員が応射し続ける事、数分。流石の化け物にもダメージが蓄積したらしく、動きがノ
ロくなっていた。そこへ、山城アーチェ率いる第一分隊が到着した。
「不知火と若葉には、後で反省文を書いてもらう」
(何で僕まで……)
世の中の不条理と云うヤツである。
「ヤツの外郭の強度は空戦機甲以上だ。二本の牙の間にあるコアを狙え、私が囮になる」
そう言うと、山城アーチェは果敢にスター・ゴライアスに向かって突撃した。
「凄い、全て攻撃を捌いている」
対レッサーデーモン戦の時は自らの事で手一杯だった為、山城アーチェが戦う姿をじっく
り見るのは初めてだった。自分より、何倍も筋力のある相手の攻撃を受け流す様は圧巻の
一言だった。途轍もない力量の持ち主だ。
(しかし、だ……コアを狙えと言われても――ね)
スター・ゴライアスのコアは開閉式で、アトミックレイと呼ばれるビーム攻撃のタイミン
グのみ剥き出しになる。拡散砲なので、懐に飛び込むのは勇気が必要だった。
「若葉専用ライゼッタには、ビームコーティングが装備されていなくって?」
「あの強力なレーザーを相手にオーラバリアのエネルギー消費が保てると確信できれば、
最初から、突っ込んでる」
しかし、そうでないからと言って、ここで引いたら勇者の名が泣く。
(――僕達の伝説はこれからだ!)
残弾数も気になるが、山城アーチェの奮闘を無駄にはできない。
「よし、KIAIでカバーだ……若葉=秋雲准尉、突貫します!」
二本の牙を山城アーチェがオーラブレードで切り払う。
(コアが開いた!)
回避行動に移る山城アーチェと入れ替わりで突入する若葉。
「――うおおおおおおおおおお!」
拡散アトミックレイをオーラバリアが弾く。弾かれた流れ弾を回避する射撃部隊。
(後、五メートル……)
火力によってスター・ゴライアスの前面から押し戻される。それに逆らいブースターを全
開させる。
(後、二メートル……一メートル、届いた!)
『ズシャ――』
鈍い音と共に、コアに宝剣ヴレナスレイデッカが突き刺さった。
『グオオオ――』
と云う、断末魔と共にスター・ゴライアスは朽ち果てた。
「これで、後は始末書を提出するだけではなくって」
取り敢えず、犠牲者が出なくて良かったと、皆が胸を撫で下ろした。後日、二人は始末書
を提出した。
(鉄拳制裁はなし、か……良かった)
「これを、お前にやろう」
そう言って、山城アーチェは不知火に眼鏡を手渡した。
「私の視力は良い方ですわ」
そう言って、山城アーチェに返そうとする。
「良いから、掛けてみろ」
はぁ……と相槌を打ち、言われた通り手渡された眼鏡を掛ける。
「こ、これは……魔力が溢れてきましてよ」
「発掘されたアダマンタイト製の眼鏡だ。名前を万華鏡千里眼と呼ぶ」
空戦機甲部隊の北の洞窟での功績が評価され、その代表として不知火が万華鏡千里眼を装
備する事になった。
「良かったね、望みが適って。おめでとう」
首を横に振る不知火。
「いいえ。今回、私は何もしてなくってよ。当然、これは貴方が受け取るべきではなくっ
て」
そう言って、不知火は万華鏡千里眼を外した。
「じゃあさ、暫く貸しておくという事で良いよ。僕は、魔法が使えないから持っていても
意味がないんだ。これからも、その力を存分に発揮して生徒会長として皆を牽引してよ」
「心得ましたわ」
不知火は強く頷いた。数日後、アダマンタイト製の眼鏡は如何なく、その威力を発揮した。
レッサーデーモンの残党狩りをすべく、再び東の森を訪れた時の事である。
「万華鏡千里眼のお陰で、雷属性魔法の空戦機甲TKが上がった所を御見せしたくってよ」
自身が有り気に不知火が言うので、皆で、レッサーデーモン達を包囲網を敷いて一箇所に
追い詰める。そこを、不知火のフォーリンサンダーで一気に殲滅するという寸法だ。
「いきますわよ!」
不知火が詠唱を開始する。魔方陣が浮かび上がった。が、魔方陣は回転しなかった。
(どうしたんだろうか?)
すると、不知火は別の呪文の詠唱を開始した。その足元には二つの魔方陣が重ねられてい
た。
「おお、あれは合体魔法だ!」
山城アーチェが感嘆の声を上げる。不知火の眼鏡の奥に輝く瞳は、オッドアイに変化した。
「サンダーストーム!」
爆発音と共にレッサーデーモン達が四散した。絶対零度と落雷の同時攻撃による水蒸気爆
発。元来、TSとはシルドラと言う幻獣の吐くドラゴンブレスの一種で、氷雷コンボの多
段式魔法なのだが、不知火の金色の左目は、それを、凌駕した。
「よくやった」
山城アーチェは不知火の肩に手を掛けた。
「教官に感謝しなければならなくってよ」
うむ、と山城アーチェも満足そうだった。周りの生徒達も互いに戦勝を称えあった。
「また一つ、新たな伝説を作ったよ!」
と若葉の勝ち鬨に呼応して、歓声が上がる。正規軍より優秀かも知れない。
「うぬぼれるな、今後は更に過酷な任務背負う事になる。お前達はまだ人間同士の血生臭
い戦争を経験した事がない……」
山城アーチェは釘を刺した。
「でも、人と人が戦うのはできれば体験したくないです」
若葉は愚直なまでに潔癖だった。
「そうだな……」
山城アーチェはヤレヤレと言わんばかりであった。こうして、東の森は平和を取り戻した
のである。

       

表紙

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Neetsha