Neetel Inside ニートノベル
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魔道普岳プリシラ
第七十六章『個人懇談』

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 学期明け――
 進路指導の目的で、懇談会が催される時期に入った。金剛吹雪は推薦入試が決まってい
た。担当教諭は望月が務める。タイケヌサ城の城主として、最高判事として、国家元首不
在の北軍と合流する為だ。
「これで、自分も一国一城の主でありますか……」
先に、雷暗の浮遊大陸統一が成し遂げられていた為、北軍と議長軍の間には、軍事的干渉
地域が策定されているままだ。
「沿岸の防波堤に駐留している北軍。これを率いて、議長征伐が目的になるわ」
その長官の任を負う事になる。
「クーデター宣言には国防長官が必要なのでありますが――」
浮遊大陸側に張り巡らされたバリケードは、名目上は沿岸諸国連邦対策だが、その手続き
が済めば、准将は敵性となる。
「逆に、議長軍は戦犯指名が回避できなくなる」
同席していた白鷹が答えた。先の講和条約。魔王の亡骸はラウンドテーブルで、大量破壊
兵器だと立証されていた。
「後顧の憂いはないので在りますか? 回廊の方は首尾良く……」
金剛吹雪の質問に、白鷹は頷いた。
「自軍の准将の存在が、敵をA級戦犯にするのでありますな」
准将とは、海兵と陸士を操る為、越権行為となって、本来ならば、元帥の身代わりに、戦
犯指名を受ける人柱である。それが、近衛師団と呼ばれる。このケースに於いては、既に、
北軍と浮遊大陸は対立関係にある。しかしながら、それは、議長軍に対しても、国際法規
上、敵対関係となっている。ここで、ラストタイケヌサ城に宗主国から判事が一人、任に
赴くだけで、北軍地域の国務長官となり、柿寄は少将に昇進する。
「その場合は大尉殿が大将に、でありますか?」
金剛吹雪は念を押して聞いた。
「ええ、そうよ」
「大元帥の認証も受けている」
金剛吹雪は訝しげな顔をした。
「これでは軍閥政治なのであります」
「国家火急の次期だ。君の従者は私が勤める。強化ルクシーフェレンスと共に、自由登校
となる年明けには、城に入ってもらう」
柿寄は長官代行となる。実質的に、長官代理を務める電撃白鷹よりも、自らの発言権を持
つ、長官代行を利用した北軍は、中央集権体制を築ける。
「事が巧く運べば、ミッションは達成されるのだー」
るなは楽観視している。
「これは、本当に巧くいくのでありますか?」
「保障はしかねるわね」
弥生は微笑した。金剛吹雪は、しばし、熟考した後、こう言い放った。
「こうなれば破れ被れなのでありますよ。教官殿に拾っていただいた、この命。燃え尽き
るまで戦えるなら、惜しくはないのであります」
こうして、金剛吹雪は推薦入試を合格して、タイケヌサ城に入城した。そして、数日後か
ら、北部は独立戦争を始める。浮遊大陸の奥羽越列藩同盟に北軍は組み込まれ、ジステッ
ド第7師団。近衛兵に大元帥から出撃命令が下った。12月6日、高雄軍の海軍は、柿寄
少将の航空師団と交戦状態に陥った。航空戦力で壊滅的打撃を目下、敵艦隊に与えたとこ
ろで、海上保安隊と機動部隊が雪崩れ込み、北軍と議長軍は全面戦争となった。

       

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