Neetel Inside ニートノベル
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魔道普岳プリシラ
第七十九章『卒業式』

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 三月末――
 ここ、ラティエナ王立魔法学園で、卒業式が行われた。故郷に帰った雷暗はこちらには
出席しない。
「少し、寂しくなったな」
若葉はポツリと本心を漏らした。回廊に転校した妹と如月八房も、在校生として参列して
いない。
「あっちはあっちで巧くやっているのですよ」
大淀葉月しか話し相手が居ない。不知火は役員として、最後の大仕事をしている。
「大元帥も初等部の卒業式なんだよね……」
若葉の両親は、そちらの面倒を見ている。望月タキジは理事長であって、初等部はPTA
の参列が求められている。
「そ、そう言えば!」
「ん?」
急に大淀葉月の態度が慌しいので、若葉はキョトンとした。
「どうしたの?」
「金剛吹雪とるなの姿が見えないのですよ! あうあう!」
そう言えば、姿を見せない。出席はしているハズだ。朝のHRでは着席していた。
「ほほう。これはきっと、伝説の木の下……」
 ――ゴクリ。
 赤面しながら喉を思わず鳴らしてしまっている。大淀葉月は、まだ、こういう話は億手
なので、からかい甲斐があった。
「ボ、ボクも告白してみたいのです!」
「ははは、弱ったな。俺には既に嫁が――」
ぶんぶん! と、首を振って若葉の発言を否定した。
「違うのです! 一目ぼれなのですよ、あの人に……」
大淀葉月の指が示した、その先には、来賓祝辞で学園に訪れていた柿寄大将が居た。目を
合わせまいと、うら若き乙女はしどろもどろしている。
「あのねぇ? 勝手にすればいいだろ、常識的に考えて……」
腐女子の思考は読めない。
「命短し、恋せよ乙女! なのです」
「ミッションの成功を祈る」
式が始まる前にアタックを仕掛けるのか、見物だったが、この場は若葉は付き合わなかっ
た。柿寄と言う人物は、は一見すると温厚そうだが、何を企んでいるのか解らない。一先
ず、不知火に相談する事にした。
「――と、言う訳なんだケド」
「良いんじゃありませんの?」
意外にも、不知火は肯定的な発言をした。
「んー、大丈夫かなぁ」
相手は一個編隊を一人で壊滅させた猛者だ。山城アーチェ教官と同じ匂いがする。
「クックルーンで神官学科の試験を受けていた時、偶々、お会いした事がありますの」
「そうなんだ」
不知火はその時の状況を簡単に説明した。
「案外、普通の人だね」
「後々、考えると、拍子抜けですのよ」
大陸記っての鷹派が、戦争否定派だ。
「まぁ、二人を応援しておこうかな」
「ですわねー」
そこで話を区切り、若葉は時計を見た。この後、卒業式が始まる。皆がそれぞれ、着席し
た。

       

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