Neetel Inside ニートノベル
表紙

魔道普岳プリシラ
最終章『ラスト・ファイター・ツイン』

見開き   最大化      

 大淀葉月は原子変換を改修した後、聖機兵ギガレッセリウスに乗り込んだ。意中の人間
を射止めんが為である。教皇庁長官代行の身としては、年甲斐もなく恥ずかしい思いをし
た。
「その、ナンだ」
いいから降りろというジェスチャーを柿寄は指示したが、どうにも、懐かれて、それも無
理の様だ。
「このまま、お供するのです」
「私は桃太郎ではないのだが……」
彼女はコックピットから降りようとしない。
(――困った)
これから、オッテス大橋を渡り、レンシスの軍産複合体の拠点を叩く。作戦履行中だ。
「打ち明けてもいいかな……私は、所詮、捨て駒でしかない」
誰の為に全てを捧げて宵のか、心に問いかけた。
「構わないのですよー」
常に前線で戦うと言う事は、そういう話だ。
「危険な任務になる」
「霊体化して、サポートするのですよ」
確かに、自分は精霊憑依の施術を行った事はない。
「ん……できるか?」
務めて表情を和らげて言った。内心は常に緊張している。その時、木霊が響いた。
「責任は取るよ?」
利害関係の一致ではない。利用しているワケではない。
「それでこそなのですよ!」
互いに命を預けると言うのは、こういうことである。若葉は、そういう意味では、最初か
ら勇者失格だったのかも知れない。お互いを知る必要はあまりない。それは後からでもで
きる。
「では、行くぞ。諸君!」
待機していた後続3万の一個師団が、排他的水域である湾内に突入して行った。後の、第
一次ソロモン開戦である。その後、戦勝を治めた長官は、過去に提唱した直轄地の予算配
分を、教皇庁に受理された。
「取らぬ『狸』の皮算用なのです」
「同感だな。君が手に入るなら、それでいい!」
聖機兵ギガレッセリウスの封印を解き放つ。守るべきモノが、今、ここにはあるから――
『戦闘開始! これより最初で最期の突撃を敢行する!』
北軍のファイナルオペレーションが始まった。
『本作戦の目的は、大陸の異端者どもを壊滅せしめる!』
金甌無欠となったクックルーン同盟軍は、総力戦に突入した。兵站を完成させた後方から、
物資の補給には余力があった。そこで、ギガレッセリウスは最前線を張る必要があるかと
言えば、厄介払いに過ぎない。
「私はそれでも――」
しかし、引く事を知らないのが、訓練された兵士である。
「貴方が好きなのですよー!」
彼女の声が機体の中で反芻した。緒戦の攻勢は大淀葉月の活躍もあり、優勢だった。
『天佑は我にあり! 突撃を慣行する!』
 それから、数週間後――
激闘の末、二人は敵軍産複合体の前線基地である武装要塞を陥落させて、帰還を果たすの
であった。

       

表紙

片瀬拓也 [website] 先生に励ましのお便りを送ろう!!

〒みんなの感想を読む

Tweet

Neetsha