Neetel Inside ニートノベル
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魔道普岳プリシラ
第十六章『test』

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 試験が始まった――
「URYYYYY!」
ルリタニアは2‐Aの生徒に匹敵するスコアを叩き出していた。
「スゲーな、あの子」
「勇者の妹さんらしいぜ」
注目が集まる。
「ふふ、当然よ」
「流石は若葉の妹だな。やるではないか」
山城アーチェは目を細めて言った。
「兄は関係ないですよ」
「関係ない、か……だが、その前に貴様の実力を見せてもらわねばならん」
その時、ルリタニアの足元がせり上がり、地中から泥の巨人、マッドゴーレムが這い出し
て来た。
「しまッ――」
『ザシュッ!』
一足飛びで山城アーチェが之を斬り伏せる。
「フッ、ツメが甘い様だな」
辺りは粗方、片付いた様だ。
「之より、更に内部へと突入する」
山城アーチェの号令一下、隊伍を組み直す。金剛吹雪と山城アーチェが先頭を進む。
(先頭を進むと言う事は、あの女装君も相当に腕が立つのね?)
どれどれ、お手並み拝見といこうかしら。ルリタニアがそう思っていると、丁度、良い獲
物が現れた。何者かによって召喚された、ブラスデーモンの群だ。
(敵の動きは俊敏ではないから、連携してヒットアンドアウェイで数を減らすのが常套策
……って、えぇ!?)
金剛吹雪は敵を目掛けて、一直線に突進した。ブラスデーモンは二の腕をを金剛吹雪相手
に振り下ろす。が、金剛吹雪は、これを、全く、問題にせず回避行動を取る事なく、更に、
加速して懐に飛び込み手にした巨大な鉈、聖剣ボルケナアッサプナで敵の胴を真っ二つに
した。
(飛び込んだ瞬間が見えなかった……)

     

 武神降臨――
「教官殿」
「何だ?」
金剛吹雪はブラスデーモン共から、目線を離さずに言った。
「ここは、自分一人で充分なのであります」
「分かった。これより別ルートの索敵行動に移る」
金剛吹雪を除いた生徒を、十人以上の分隊に分け、各部隊ごとに枝分かれする洞窟内を調
べた。

     

ルリタニアは山城アーチェと同じ分隊になった――
「あの人、大丈夫なんですか?」
「心配はいらんよ。ヤツも素人ではない、スペシャリストだ」
暫く、進軍すると大きな部屋に出た。そこには数百と云うガルフビーストの群が、巨大な
クリスタルを守るようにして生息していた。これに相対した山城アーチェ隊は、戦闘体制
に入る。直ぐ様、他の部隊に通信を入れ、援軍要請を出した。
「若葉と約束してしまったからな、お前を守ると」
山城アーチェがヒートホークを振るう。
「こんな所で死ぬつもりはないわ」
 気合を二人は入れ直した――しかし、十数分と絶え間なく波状攻撃を繰り返されては、
体力に限界がある。
「半数は殺ったか?」
「まだまだいけますッ」
敗色濃厚な所を、頼もしい助っ人が登場した。
『ドゴォォォン――』
 広場の壁の一部が吹き飛ぶ。

     

 ここで、援軍が到着――
「今回、私の出番がなくて、少し寂しくってよ」
不知火率いる生徒会部隊が加勢した。
「サンダーストームッ!」
不知火が、血路を開く。そこへ、部隊員が雪崩れ込んだ。
(これだけのガルフビーストの数が居ると云う事は、必ず黒幕がいますわね)
不知火の広範囲魔法はガルフビースト共を見る見る内に、一掃していった。
「お姉様、凄い!」
ルリタニアが不知火の元へ駆け寄った。
「まだまだ、余興は之からではなくって?」
不知火のバックパックの一部のパーツが放出され、敵陣の隅の地面に突き刺さる。
「プラズマ・ネット・リーダー!」
電撃がガルフビースト達を一網打尽にした。
「流石は、雷神の血を引く華麗なる一族。・R・スカーレッド家の末裔……」
広間の様相は、まるで死屍累々だった。
「何故、お姉さまは、初めから、あの技を使わなかったの?」
「プラズマネットリーダーは、意識を詠唱中に幽界の深層部に取り込まれるのは宜しく
て? つまり、それは無防備状態という事ではなって。故に距離を取らないと危険なのだ
わ」
一戦終えて休憩している所へ、痣だらけの金剛吹雪がやって来た。
「こちらも片付いたのであります」
「ご苦労。さぁ、後はクリスタルを運び出すだけだ」
今回、戦ってみて分かった事……それは命懸けだと言う事だった。ルリタニアにとっては、
苦い思い出となる初陣だった。後日――
「之より転入試験合格者を発表する」
正門前の張り紙に名前があるか、ルリタニアは探した。
「あった……」
「良かったな」
一緒に見ていた若葉はルリタニアの頭を撫でた。が――
「もう子供扱いさせないわ」
若葉の手首を掴んでルリタニアは言った。

     

 武に必要な小憩――
「仲の良い兄妹だな」
山城アーチェが二人を見て言った。
「そうですわね」
不知火もそれに同意した。

     

数日後、学園は合格者に説明会を行った。
「今回の召集は、クックルーンで行われる観艦式に合わせる形で編入試験を行った。故に、
採点基準は幾分か優しくしてある。よって、諸君等はそう易々と進級する事ができないと
思われるので、気を引き締め、遅れを取り戻して欲しい。尚、配備される空戦機甲は、先
日、使用した量産型空戦機甲のゴースティカル・シャルドゥエ機甲になる。以上、説明、
終わりっ」
山城アーチェからの説明はそれだけだった。頭数を揃える為と云うのが納得いかなかった
が、ルリタニアは我慢する他ない。

       

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片瀬拓也 [website] 先生に励ましのお便りを送ろう!!

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