Neetel Inside ニートノベル
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魔道普岳プリシラ
第十八章『クロス・ファイト』

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 主砲を不知火は撃ち続けた。
「――万華鏡千里眼に罅が入りましたわ」
不知火は、既に、その身が負荷に耐えられなくなり、視力を失っていた。心眼で敵を補足
して、命中精度を保っていた。
(こんな時に護身開眼ではなくってよっ!)

     

 ――フィルティノは傷だらけに為りながらも、魔王ゲルキアデイオスの元へと辿り着い
た。
「調子はどうだ? 満身創痍だな」
金剛吹雪は言葉を返さない。軽く微笑んでいた。静かに、そして、涼し気に……
「金剛吹雪=ストックウェル、参るのであります」
最後の死闘が始まった。まず、金剛吹雪はパワーで魔王ゲルキアデイオスを圧倒した。
「大淀葉月の思い人であったとしても、容赦はしないのであります」
機動性では、やや劣るモノの、力で捻じ伏せるつもりだった。
「何という女だ、人の身でよくここまで練り上げた」
魔王ゲルキアデイオスの足元に魔方陣が浮かび上がる。
「メテオストームッ!」
上空で何かが光った。
「このシアンフィル=レイ=カウントが、粛清しようと言うのだ!」
「なら、何度でも守って見せる! 皆の笑顔を!」
最大出力のオーラを天を切り裂く巨大な鉈、聖剣ボルケナアッサプナに注ぎ込み切り掛か
る。
「敵よ! 殺してみせろ、この体に鉈を突き立ててみせろ。八千年前のように、一億と二
千年前のようにッ」
「ハイパー月光爆裂斬!」
金剛吹雪の全力全開の必殺技の前には、流石の魔王ゲルキアデイオスも空気の爆ぜる音と
共に、四散した。
「霊体は……あそこでありますかっ!?」
金剛吹雪は落下する隕石を見ていた。
「若葉、聞こえるのでありますか? 魔王ゲルキアデイオスを封印したのでセラフィック
ゲートは閉じた筈であります。唯、魔王のカタストロフ級大魔術により、隕石がこの地に
降り注ぐのでありますよ。本機は、これより、阻止行動に移るのであります」

     

フリートエルケレスのブリッジに戻り山城アーチェが戻った。
「地上落着まで十四時間です」
「勝負は九時間だ。それで阻止限界点を越える」
「阻止限界点?」
若葉が聞いた。
「ここなのですっ」
コンソールパネルにシミュレートが映し出される。
「ここを突破されれば、メテオほどの質量を止める術は……」
「その前にメテオを奪取し、軌道を逸らさねばならん」
大淀葉月は表情を曇らせた。
「レイ=カウントとは流星群を数える、と云う意味なのです。同時に、文明を滅ぼした回
数とも言えるので、この結末は……悲しいのですよ」

     

――高度三万メートルでの戦いは続いていた。
「逝け、ヘリオス! 忌まわしき記憶と共にッ」
金剛吹雪は全速力でメテオに取り付いた。
「直接、押すのであります」

     

強化ルクシーフェレンスのテールノズルを望遠でブリッジからも確認できた。
「フリートエルケレスで押すのだ!」
「無理ですよ、教官!」
強化ルクシーフェレンスがエメラルド色に発光する。やがて、その光はヘリオスをも包み
込んだ。
「周辺住民に避難勧告を出せ」
やがて、メテオは無人の穀倉地帯に落下した。

       

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