Neetel Inside ニートノベル
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へらへらと笑って生きる。
「へらへらと笑って生きる。」

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 戦争、らしい。僕たちはロボットに乗って敵軍をぶっ殺さなければいけない、らしい。敵軍はエイリアンで、未知の科学力で僕たちを蹴散らしていく、命はないものと思え、らしい。

 けれど所詮は徴兵で集められた民間人だ。そんなこと言われたって、その、なんだ、困る。まだ僕らは十七歳なわけで。まだまだ青春したいわけで。だから演習なんてサボってしまって、宿舎裏でぐだぐだ煙草なんて吸ったりしてしまうのだ。

「ミッチーは最近どないですか。もうかってまっか?」
 隣に座るミズキが言う。彼女は煙草を吸わないので、かわりにポッキーをくわえている。別にくわえる必要なんてないのだけど、何故かくわえている。ちなみに代金は僕が払いました。げふう。

「どないもなにも、もうボロボロでんがなー」
「ボロボロかー」
「ダメダメでんがなー」
「ダメダメかー」

 こうやって立ちぼうけている今ですら全身の筋肉が痛む。日々のキッツい訓練は、思いだすだけで奥歯がガタガタ鳴ってしまうのだった。うん。むしろうんこ座りをしているミズキはケツが痛くないのだろうか、と驚嘆してしまうくらいだ。本当に、どうしてあんな姿勢ができるんだろう。

「ケツ、痛くないの?」
 気になって、聞いてみた。
「安産型なのでー」
 そう言って、ぱん、とお尻をはたいた。
 いや、意味がわからないんだが。思わずツッコミかけるが、こいつが意味わからないのは前からだった。気を持ち直してスルーするー。

 昼過ぎだった。日光はぽかぽか温かくて、ついうとうとしてしまう。そんな昼過ぎだった。遠くから教官の怒鳴り声が聞こえる。また誰かしかられてるな。そう思った。

「おー。平島さん、またキレてるね。さすがは抜群の安定感やでー」
「やっぱ声の気迫が違うよな。安西とか、あいつはただ大きい声張り上げてるだけじゃん。平島はその点さ、こう、うまく言えねえけど」
「どきゅーん! とくるよね」
「どきゅーん! とはこねえけど。まあ言いたいことは分かるよ」

 一服して、フィルターまで吸いきった。最後の一本まで尽きて、ふいに手持ちぶさたになった。突っ立つだけ、というのも味気ない。ミズキに頼む。

「な、そのポッキー一本おくれよ」
「え、いやだよ」
「な……!」
 一発で断られた。こ、こいつ、なんて娘だ! そもそもそのポッキー、誰の金で買ったと思ってるんだ。おい。こ、これはお仕置きが必要だな、ぐへ、ぐへへへ。などと言う度胸もなく、僕はそうか。と引き下がることしかできないのだった。

「そうか」

「いや、それはそれでいいとして、ミッチーは3DS買った?」
「ん、いんや、まだだけど」
「まだかよ。さっさと買えよ。そして私にもやらせろ。やらせろきゅう」
「なんだよその語尾。きゅうて」
「特に意味はないきゅう。ご託はいいから早く買えきゅう」
 きゅうきゅう鳴きながら僕に3DSを買え、と迫るミズキ。こいつ、もしかしたら僕のこと単なる金づるとしか思っていないんじゃないか? それはよろしくない。あまりによろしくない。僕だって男だ。舐められっぱなしと言うわけにはいかない。こうなったら、こ、こうなったら、お、おお、お仕置きしかないな。ぐへ、ぐへへへ。などと言う度胸もなく、僕は勘弁してください。と頭をさげることしかできないのだった。

「勘弁してください」
 ぴょんぴょん飛び跳ねると、小銭の音も聞こえないわびしい僕のポケットが静かだった。
「ほら、金ないんです」
「ち、しょーがーねーなー。じゃ、アレでいいよ。一発ギャグでいいよ。それでいいよ。はい、5、4,3」
 な、ちょっと待て。まだ心の準備が……!
「2、1」

「も……」
 僕は精一杯の媚びをにじませた声で、言った。
「萌え萌えー、きゅう!」
 そしてポーズ。指でハート作って、後ろにはきらきらエフェクト。どうだ。どうだミズキ? どきゅーん! と、きたかい?

「うげらぼあ。目が腐るから、死ね」
 吐き捨てて、ポッキーをひとかじり。浴びせられる冷たい視線は氷点下100度。言われるまでもなく死にたかった。穴があったら、入れたい。ぐへ、ぐへへへ。

 ……また教官が怒鳴っている。一時間に二回雷が落ちるのは、ちょっと珍しい。

「平島、今日は機嫌悪そうだな」
「そりゃあ、ミッチーが講習サボってるからでしょ」
「……あー」
「あとでメチャクチャに怒られるがいいさ。はは」
「いや、なんか他人事みたいに言ってるけど、きみもわりとヤバいからね」
「私は、ほら、あれだ。色仕掛けでなんとかするから」
「……あー」

 それからしばらく無音だった。風が吹いて葉擦れの爽やかな音がして、それ以外はなにも聞こえない。その沈黙を破って、ふいにミズキが言った。

「萌え萌えきゅん」
「え?」
「萌え萌えきゅんとか、そういうの好きなの?」
「あ、ああ。好きというかなんというか、わりと」
「そうなの」

 再び沈黙。なんだったんだろう、とミズキの方を見ていると、またもや突然、なんの前触れもなく立ち上がり、そっけない無愛想な声で、言った。
「萌え萌えー、きゅう」
 そしてポーズ。指でハート作って、後ろにはきらきらエフェクト。

「どう? どきゅーん! ときた?」
「いや、あまり……」
「そか」
 さして残念そうな様子もなく、また元のうんこ座りに戻った。
 こいつとは小学校ん時からの腐れ縁だけど、その生態はいまだ謎に包まれている。よくわからん奴だ、と思った。

「よくわからん奴だ」
「なんか言ったか」
「いえ、なにも」

 やがて終了を告げるチャイムが鳴って、僕らはのろのろと棟内へと戻った。途中不運にも平島さんに出くわして、僕は前歯を二本折られた。ミズキは果敢にも色を仕掛けたがそれもむなしく、腹を殴られげぼげぼと吐いた。彼女は涙目でうずくまるだけだったので、後片付けは僕がした。次の講習は真面目に受けた。教官はミチコ先生だった。おおきなおっぱいがエロくてよかった。

       

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