Neetel Inside ニートノベル
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「ナーちゃん、起きて。もう昼ごはんできるよ」
ナナカは目をこすりながら起きあがった
呼んでいたのは、ミカコだった
「いつの間に帰ってたの、お姉ちゃん」
「もう三十分もまえよ」
ミカコはエプロンの紐をほどいてキッチンの脇においた
姉が帰ってきてるなんて、ナナカはぜんぜん気づかなかった
「ふーん……」
ふぬけた返事をすると、ミカコは
「どうしたのよ、お昼寝なんて」と少々あきれたようにナナカにきいた
馬鹿にされたと感じたナナカは、すこし頬を膨らませて
「いいじゃない、きょう入学式で疲れたんだし」と反論する
かるく笑ってミカコは鍋に手をかける

昼食はクラムチャウダーだった
「お手製だ」と胸を張るミカコをほうっておいて、ナナカは黙々とさじを動かす
「……そうだナーちゃん」
おもむろにミカコが口を開いた。ナナカは顔をあげる
「どうしたの」
「ナーちゃんが入った高校って南高でしょ」
どんなことを聞いてくるかと思いきや、どうでもいいことだった
「妹のはいる高校くらい覚えといてよ」とナナカは呆れ顔
「確認よ、確認」
ミカコはコップに注いだ緑茶を飲む。クラムチャウダーとはバランスが悪い
「それで、なんでそんなこと聞いたの」
「ああ、なんでかっていうとね」
訝しがるナナカに、ミカコは理由を語りはじめた

「春休み、えっと、具体的にいうと三月の終わりごろにさ、事件あったじゃん」
「……どういう事件」ナナカは首をかしげる
「ほら、高校生がビルの中で死んでたって事件。おぼえてるでしょ」
ナナカは頭のなかを「高校生 ビル 死亡」というキーワードで検索した
該当、一件

「……三月三十日、○×市の雑居ビル三階で市内の高校に通っている…………さんとみられる死体が発見された。警察による解剖の結果、死因は薬物を一度に大量に服用したためと思われる……」

「思い出したでしょ、クスリで死んじゃった高校生の子」
ナナカは思い出した。夜のニュースでもながれていたし、なによりこの事件で高校が緊急説明会なるものを開いたのだ
「もちろん、そりゃあこの市でおきた事件だもん」
「あの子って、何高なの」
ミカコはぐっと距離を縮めてきた。野次馬根性というか、好奇心だろう
「どこだったっけ、たしか……第一だったかな」
「ああ、そうなんだ」
ミカコはため息をついて体をそらせた。明らかに興味を失った態度だ
「面白くないの、お姉ちゃん」
「いや、そういうわけじゃないんだけどね。どういう子だったか知りたかったから」
ミカコは残りの緑茶を飲み干した


       

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