Neetel Inside 文芸新都
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文芸作家カタログ
素人批評

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●伊勢カツラ先生
 代表作:「オナニーマスター黒沢」「ラストメンヘラー」「冥土Haaaan!!!」

 プロ並み……というか、実際にプロ。
 癖のない、読みやすく質の高い文章。美文や難しい言い回しがないため「目立つ」文章ではないかもしれないが、描写力は高い。一度辺りの更新量が多いにもかかわらずさらりと読めてしまう辺り、やはりハイレベルと言っていいだろう。
 特にずば抜けているのは構成力。導入部からは物語の持つ領域の広さがまるで想像できないのだが、キャラクターが自由に泳いでいくようでいて、実は緻密に最終回への階段を昇っている。読者は読み終わる頃にそのことに気がつく。入り組んだ話なのに、読んでいる過程で要素を消化しているという臭いをまるで漂わせない。
 文章力というベースに、構成力という堅牢な骨組み。更にはそこにある程度キャッチーな要素を埋め込み、エンタメ要素とシリアスな展開の配分もうまい。絶妙のバランス感覚なのだろう。こういう人を「ストーリーテラー」というのだな、と思う。
 なんだかやたらと褒めているが、筆者は実のところ「ラストメンヘラー」しか読了したことがない。単に好みの問題だと思う。実力は間違いなく新都社トップクラス。言うまでもなく。



●後藤ニコ先生
 代表作:「コ・リズム」「脳内モダニズム」

 言わずと知れた文芸女王。この言い回しが既に使い古されている感さえある。
 かなり「目立つ」文章を書く人。新都社内の評価でも必ず文章力に言及される。そのくらい目立つ。文章の独特の節回しが某作家に似ていると指摘されることが多いが、筆者は某作家の作品を読んだことがないため比較は出来ない。
 語彙の豊富さ、言い回しの華麗さ、それを読むだけでも事足りてしまうのだが、そこに乗っかってくるボケ倒しの精神が素晴らしい。しかし単にそれのみで終わることはなく、必ず最後には思わずほろりとさせられたり、呆気にとられるような仕組みが潜んでいる。フィクション・エッセイ的作品でも己の黒歴史と思しき過去を開陳し身を削っているようでいて、実のところ読者は文章の波に翻弄されているだけなのではないか。プライドが高い割にサービス精神旺盛、ただし最後には必ず主導権を手にするニコ女史が、泳がされている読者を眺めながら、グラスワイン片手にほくそ笑んでいる姿が浮かんでくる。いや、これは単に個人的印象だが。
 更に個人的な意見を重ねれば、筆者的には「能力の高い人は何をさせても頭ひとつ抜け出ている」という一例に思える。文章はうまい。コ・リズムは確かに胸に迫る描写があった。が、どこか器用貧乏な印象がつきまとう。書いている彼女自身が、いつもどこかが欲求不満気味なのではないかと感じてしまう。うまいのだが、何かがもどかしい。
 しかし筆者自身も彼女の作品が更新されれば必ず読んでいる。そういう読者を持つ作者が新都社にどのくらいいるか、またその読者の数を考えれば、筆者の印象など取るに足らないことが証明されているだろう。知名度も抜群に高い。この先彼女と文章がどのように折り合いをつけていくのか、個人的には期待しつつ注目している。



 以上の文藝(ニノベ)作家のキング・クイーンについて書いたが、これはどちらかというと「筆者と読んでいるあなたの感覚がどのくらい近いか(あるいは遠いか)」という試金石の役割が強い。
 以下、(当然のことながら)独断と偏見に満ちた見解を述べる。



●ピヨヒコ先生
 代表作:「ネジレとヒズミ」「稲沢アイラブユー」

 もしも筆者が「新都社の小説で面白いのある?」と質問されたなら、ひとまずキング・クイーンはカタいとして、必ずこの方の名前も挙げるだろう。
 「ネジレとヒズミ」は高校生たちが主役の話。全編を通して、第三者の穏やかな語り口調で綴られている。とはいえ爽やか路線の話では全然なく、既に冒頭から不穏な空気が立ち込めている。というか、助走も暖気もほとんどないままアクセル全開でダークストーリーに落ちていく。本当に容赦がない。どこまでいくのか見届けてやろうと思って一度引き込まれると抜け出せない。
 その物語の暗さを支えているのは、過不足のない文章と描写力だ。それらがなければ白けてしまうだろう。そして青臭さまでもが瑞々しく魅力的なキャラクターが清涼剤として、物語のトーンに少しの軽さを与えている。
 ひとつ率直に言わせてもらうならば、筆者としては、短編まで含めて結末が少し弱い気がする。もちろん、結末にカタルシスが不可欠というわけではないのだが。過程でめまぐるしく引き回される分、どうしても結末に期待してしまうのだろうか。
 「ネジレとヒズミ」に関しては漫画化を要望する声も聞かれるが、この引きずり込んでくるトーンは文章ならではと言う気もする。しかし漫画も読んでみたい。希望します。



●顎男先生
 代表作:「賭博異聞録シマウマ」「<リボルヴァ⇔エフェクト>」など、多数

 多数の完結作を持ち、更新スピードも質も新都社内では一歩抜け出ている。筆者はギャンブルメインの作品は読んだことがないのだが、最近では別ジャンルの作品も積極的に書いている。
 文章の基礎力は高い。年齢にしてはかなり筆力があると思う。更新ペースの速さを考えると更に評価は上がる。一読すると癖がないようだが、映像的な要素が強いという点で特徴的に思える。色彩や人物の動きがよく映える、とでも言おうか。テンポもいい。緊張感やその後のカタルシスなど、テンションの調整がうまい。
 ライトノベル作品なのだろうが、登場人物は何か独特の暗さを抱えていたりする。そういう薄暗さは下手をすればとってつけたようなものになってしまうのだが、浮きすぎず極端になりすぎず、その暗さの足元をうまく描けているのではないかと思う。また、短編の不穏なトーンやまとまり方もなかなか良い。
 しかし、「あの世横丁ぎゃんぶる稀譚」を読んでいて感じたことがある。世界観や空気と滲み出てくるカラー、そして取り扱う題材とが、なんとなく一体感に欠けている。作品としての方向性が、作者自身の中で定まっていないのかもしれない。あるいは書く中で定まっていく、今その過程なのかもしれない。勿論これはごく個人的な印象に過ぎないのだが。
 現時点での完成度と、伸びしろがどれだけあるのかを考えると、先が楽しみな作者さんの一人。




●飛蝗先生
 代表作:「_Ghost_」/「四季咲き向日葵」「父よ母よ」(削除済み)

 連載終了、あるいは投げた作品は消されてしまう。というわけで、現在読めるのは「_Ghost_」だけになっている。作者なりの美学なのだろうか。個人的にはそういう姿勢は悪くないと思うが、しかしもったいない。
 なんといっても独特のノリを突き詰めた節回しが特徴。怒涛の独白の饒舌さに知らず知らず引き込まれ、奇妙な一体感とカタルシスを味わえる。一般的な「小説」の体裁から少し逸脱しているため、好き嫌いがはっきりと分かれるかもしれない。軽妙な表現は、それでも決して軽薄ではない。ノリだけではない。単語は間違いなく作者独自の基準で汲み取ってきたものだし、誰かが真似したって多分うまく行かないだろう。軽いだけになってしまう。そういう絶妙なバランスを孕んでいるように思える。
 それからキャラクターがいい。みんなどこかが過剰でコミカルなのだが、不思議にリアルな落としどころを持っている。そして女の子がかわいい。全員やたらとサドっ気が強い気がするものの、根底の部分が凛として姿勢がまっすぐなのだ。ちょっとこれは……というどぎつい性格なのに、必ず「かわいい」と思わされてしまう。
 良くも悪くも、新都社でしか読めないタイプの作品であるのは確か。「四季咲き向日葵」では安定して更新されていたが、最近は更新ペースにかなりばらつきがあるのも残念だ。



拙い文章ではあるが、自分の中で「しっかり読んだ」という実感のある作者さんを選んで紹介させていただいた。
また書けたら書きます。

       

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