Neetel Inside ニートノベル
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蒼き星の挿話
リーズナー

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 あの後私は自身の死を偽装した。できるだけ周囲に疑問を持たれないように、自然災害による死を選び、私が死んだ証拠として私が肌身離さず持っていたバスタードソードブレイカ―を残した。
 しかしそれでも闘神アレス・フリードの死はそう簡単には広まりはせず、私の人間として活動は極端に制限される。
 故に私は組織をより効率的に機能するように改良を加えることに専念することとなった。
 まず、増えた人員を研究分野ごとに分散させ、組織の存在を防ぎ、研究成果に関わらず集団統率能力に優れた者を室長とすることで、組織の管理効率を上げる。分散させた組織はそれぞれ容易に接触できない程離れてはいるものの、私がそれらの連絡を一手に担うことで距離の問題と組織の全容を知る者を作らずに済んだ。
 組織がその体制に移るまで5年、さらにそこから体制が変わったことで生じる問題が落ち着くまでさらに10年を必要とした。
 その間、いくつもの不手際が生じる。独自に国々の情報を集める部署が完成するまでの間にミラージュから脱走したコトダマ使いの行方を見失ったり、アルコールを毒に変える虫の開発途中でその研究者が虫を外部に漏らすなど様々な不備があった。
 かろうじて幸いだったのは、そのどれもが組織の存在が外部に露見する事には至らなかったということだろう。

 半年に一回の室長集会、組織体制が落ち着いてから初めての集会でようやく全部署が研究に関する報告に専念できる形となった。
「いや、しかし今回の第一部署の成果は目を見張るものがありますな」
「ふん、あれだけの予算を使っているのだ。そうでなくては困る」
「実際どこの部署も今回は前回と比べそれなりの成果はあったようだしな。やはり組織内部の雑事が片付いたことが大きいのでは?」
「ま、確かに内側を固めるのは大事よね」
「そう言えば第5部署の室長の姿が見えないが…。連絡係殿、何か御存じか?」
 連絡係、私が名前を明かさず、部署の連絡役を一手に担っていることから私はそう呼ばれている。
「彼らは外部の者に情報を漏らそうとしていた。故に出資者に処分され、第5部署はもう存在しない」
 場がざわつく。
 彼らはあくまで出資者から資金を与えられ部署の運営を行っている、ということになっている。室長達が信じている出資者は架空のもので、資金の割り振り、組織全体の運営方針等は全て私が決めていることだ。
 しかし、その出資者への報告も全て私が請け負っているため、彼らに気付く術は無い。
 そして、第5部署への処分も私の一存だ。実際彼らは外部へ情報を漏らすような素振りは一切なかった。それでも第5部署を処分した理由としては、研究内容が”わたし”にとって有益なものではなかったことと、第5部署がキサラギ国内にあったためだ。
 第5部署内で組織の大まかな構造を理解している者をあらかじめ私が処分し、残った人員を反キサラギ派として国に対応させることで、小さな内乱がいくつか起こったクレストと同じような不安をキサラギにも植え付ける。
 それにより、クレストとキサラギの力の拮抗状態にすることが狙いだ。
 元々多民族を抱えるキサラギにとって、内側に敵対勢力が発生することは無視できない出来事だろう。この一件で燻っていた他の反キサラギ勢力が動けば言うことは無い。
「第5部署か…、まあたいした成果も無い部署だったしな。問題は無いだろ」
「いやいや、私は一研究者としては少し興味ありましたけどねぇ」
「君は意外とロマンチストだったのだな。人が空を飛ぶなど物語の中の話だろう?」
「鳥や虫が空を飛べるんだ。可能性が無いわけではないと思うが」
 思い思いに飛行技術について語りだす室長達。
 他部署の技術について語り合い、そこから新たな可能性を生み出すこともこの集会の目的の一つだが、今更無くなった部署の話で時間を潰せるほど、彼らは暇な立場ではない。
「各々方、新しい技術について話し合うのは結構だが、議題はまだあるだろう?」
「おお、連絡係殿脱線して申し訳ない。ではまず組織の名称についてだが――」
 これ以降、第5部署の話題は打ち切られ、今まで名前の無かった組織に名称がつけられた。
 ”リーズナー”それがこの組織の名前だ。
 室長達も思う所があってこの名を付けたのだろうが、そんなものわたしには全く意味など無い。重要なのは役目を果たすかどうかのみだ。

     

 あの室長集会から約2週間後、私は組織の中で最も予算を獲得している第一部署に来ていた。
 第一部署は今現在国々で最も必要とされている禍紅石の技術を研究しているため、予算も人員も他の部署より随分と多い。そのため、自然と私がこの第1部署に留まることも多くなる。
 私が研究の進行具合を確認していると、よく知っている者が話しかけてきた。
「連絡係殿、少しお時間よろしいですか?」
「…時間は大丈夫だが、何の用だ?」
 私に話しかけてきたこの男は、ベスタリオ・ブレイズ。研究者としての能力は高い方ではないが、まとめ役としては中々の実績を持ち、第一部署の室長補佐を務めている。
「ええ、なんでもダンテ…、ダンテリオの奴があなたに聞きたいことがあるらしいんです」
「分かった、この報告書を読んだら彼の研究室に向かおう」
 ダンテリオ・ブレイズ、ベスタリオの弟で研究者としてはこの第1部署のみならずリーズナ―の中でも1、2を争う実力者だ。性格面で少々、いや、かなり問題のある人間だがそれを差し置いても優秀な人間であることに変わりは無い。
 私は資料を一通り読み終えると、ダンテリオの研究室に向かう。
 通常、研究室は3人から5人程度の人間が同室で研究を行う形となっているが、ダンテリオの場合誰かと組ませた方が効率が落ちるため、この研究室は彼一人で使っている。勿論、その理由以外に彼と誰も組みたがらないというのもあるが、こんな状態で研究を許されているのもダンテリオの能力の高さ故だ。
「入るぞ」
「ああ、どーぞ」
 床に散らばった資料をどかし、椅子に置いてあった本を片付けると私と向かい合うようにダンテリオは椅子に座った。
「聞きたいこととは何だ?」
「まあちょっとばかり聞きにくいことなんだけどねぇ…」
 ダンデリオは全くと言っていいほど日に焼けていない白い頬を指で掻くと、薄汚れた眼鏡越しに半開きの目で私を見詰める。
「このままじゃ気になって仕方ないし、率直に聞くけど、君人間じゃないでしょ?」
「――」

       

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