Neetel Inside ニートノベル
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それとこれとあれ
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 この世界、いや、この日常を不思議に思う事が多々ある。それはいつも何気ないことでだ。たとえば教室でのこと。
ノートに書いた文字が誤ってたので、消しゴムを使おうとしたとき、手が滑ってそれを落としてしまった。通常なら
席を立ち、ほんの少し歩けばすぐに拾える。が、俺は決してそんなことはしない。手を前に出し、人差し指をくいっと曲げる。
すると消しゴムが、空に舞い、美しい軌道を描きながら、俺の手にストンと入った。誰もそれを見て驚かない。当たり前だ。
この魔術が、俺たちの日常なのだからだ。

     

「はじめまして。伊波けいと申します!」
「けいちゃん、誰に挨拶してるの?」
俺の意味不な行動にあたふたしている幼馴染のか神中みずほ。
「主人公にあたります!以後、お見知りおきを!」
「なに言ってるのけいちゃん!それにけいちゃんは主人公になれるような人じゃないよ?」
真っ黒な腰までかかる髪と、豊満なぱいおつを揺らしながらひどいことを言われた。
 今はワクナ高校の校門前だ。この高校は家からちょっとばかし遠いのでバス通学だ。つい一ヶ月前、俺たちは中学生だった。
ワクナ高校は、俺たちが住んでいる地域のなかで、一番頭がいい高校だ。ちなみに俺は全然賢くない。なのに入学できたのは、筆記試験と
もうひとつ試験があったためである。それは魔術試験。通称「魔験」。試験内容はごく単純。自分が出せる一番の魔術ほ披露するだけだ。
合格発表日に俺の点数を見してもらうことができた。内心、絶対に落ちたと思っていたので、自分の受験番号があったときにはなにかの
間違いかと思った。結果、点数は筆記、100点中、21点。 魔験100点中、89点。テスト用紙を見してくれた教師はこう言った。
「よく受かったね~www。」
バカにされているのも、テンションの高さのせいで気づかなかった。それにしてもなぜこんなにも魔験の点数がいいのか分からない。
ためしに教師に採点基準を聞いてみたところ、どうやら今年から基準が大きく変わったからだと言うのだ。俺なりにその話を頭の中で
整理してみた。
 魔術とは、大きく分けて3つある。1つ目は、「属性魔法」。火、水、風など自然現象を生み出すことが可能で、
2つ目は、「潜在魔法」。その人物しか使用できない唯一無二の魔法。(昔は、超能力と呼ばれていた)
最後に、「魔工武器」の使用による物理と魔法による攻撃が可能。
 以前まではこの3つを魔験で行っていた。しかし、去年転勤してきた校長が3つのうち、2つを魔験から削除してしまったのである。
その2つとは、属性魔法と魔工武器であった。当然、周囲からの反発は大きかったものの、無理やり消してしまったらしい。
おかげで俺はワクナ高校に入学できたわけだし、ほぼその校長のおかげとも言っていいだろう。
聞くところによると、その校長は、相当の変人らしい。教師からの信頼はあまりなく、生徒の信頼の方が厚いとか。
 俺はさらに疑問が浮かんだ。たしかに俺の魔験の点数は89点。しかし、なんでこんなにも高得点なのかが分からない。
点数を教えてくれた教師に尋ねたが、詳細は一切教えてくれない。それどころか、その教師ですら採点基準を知らないような口ぶりだった。
さすがに俺も諦めて帰ろうとしたとき、教師はこういった。
「魔験の採点をしたのは、校長だけだよ。」
コツコツと教師は歩いて行った。
 心の底から、校長としゃべってみたいと感じた。こんなにも強く願うのなんて初めてかもしれない。
 長く考え込んでいたからか気づかなかった。いつのまにか下駄箱の前まで来ていた。みずほが早く教室いこ、と促してくる。
「ああ、そうだな。」
階段を上るとき、廊下の一番奥の校長室を見た。が、すぐに視線を戻し教室へと向かった。

       

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