Neetel Inside ニートノベル
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「レビト・スウィーダ、これが俺の名か」
「はい、その通りです。魔法カードには必ず作成者の名前が銘として入ります。銘が自分のものでない場合、使用や還元はできますが、効果の編集はできません。そのため購入あるいは譲渡されるなどしたカードの扱いには注意してください」
 二枚のベースカードのうち銘は一致しているが、IDは『1』、『2』となっていて違う数字が入っている。
「IDは、これは作成順だな」
「はい、ベースカードを作成するごとにひとつずつ数字が増えていきます。これは不変のもので、たとえカードが還元されても作成されたカードの枚数は保持されます」
「つまり、例えばこの二番のカードを還元してからもう一度ベースカードを作っても、そのカードに表示されるIDは『2』ではなく『3』ということだな」
 レビトが確認するように女を見ると、女は理解が早くて助かるとでも言うように軽くほほ笑んだ。
「その通りです。ベースカードを二枚作っていただいたのは、これ以降のベースカードを作成する作業を簡略化するためです。前準備として、まずリュックの中から鉛筆を取り出してください。細めの木の筒の中に削ったものが入っています」
 レビトはリュックを再び開け、木筒を取り出す。説明の際に取り出しやすいようにか、木筒は荷物の一番上にしまわれていた。なめらかな材質の木で出来たそれの中には、先がナイフで鋭く削られた鉛筆が四本入っている。
「それでは二番目のベースカードへ、このように書いてください。『ID1のカードの複製を作る。』と」
 レビトが女の言うとおりに書きあげると、彼が書いた文字から光が生じ、次いでカードから剥がれるように文字が宙へ浮き出した。文字が完全にカードが離れてしまうと同時に、先ほどベースカードを作成した時のように、了解を取る旨の光る板が浮かび上がった。
「そこで了承を押せば書いた内容がカードへ反映されます」
 レビトはうなずいて了承を押す。すると光る板が消えると同時に、カードへすいこまれるようにして文字が転写された。表面をさすってみても鉛筆の粉が指につかないことから、彼が鉛筆で書いた文字そのものではなく、完全にカードと文字が一体化してしまったことが分かった。
「これで完成です。このように文章を書いてカードへ効果を付与する際も魔力を消費します。それについてはまたあとで説明します。まずカードを使ってみましょう。方法はいくつかありますが、最も基本的な方法はカードを手に持って『発動』と念じるか、口にするだけです」
 レビトは出来たばかりの、転写された一文以外はベースカードと何も変わりの無いそのカードを見つめながら心で念じた。
(発動)
 瞬間、カードの表面が淡く光り、まもなくして巻物で作った時と同じように空気が寄り集まるようにして空中にベースカードが生成された。
レビトは生成が終わっても空中に浮いたままになっているそのカードを手に取り、ふと発動と念じたベースカード作成カードを見た。するとカード表面は煤にまみれたように真っ黒になっており、しかもそれは時間の経過に従って黒さが薄くなっているようだった。
「カードが黒くなっているのは再装填時間に入ったことを表しています。魔法カードは使用後、一律十秒間の待機が必要となっており、その間は発動を念じても発動させることができません。色が薄くなっていて発動できそうでも、発動できないときはカード表面下半分の効果説明欄が黒塗りになっていますので参考にしてください」
 確かに説明されている間にも徐々に黒さが薄れていき、完全に元の状態に戻るまではカードの下半分は黒いままだった。
「思ったより簡単だったかと思います。他にもカードに名前を付け、その名前を前につけてから発動と念じても発動できます。この方法でも魔法カードを使ってみましょう。ID3のカードへこのように書いてください。『対象のオーナー権があなたにあるカードを還元する』と」
 レビトは言われた通りに書きうつし、現れた光の板から了承を選んで、その効果を転写した。
「次にカードの上半分、正方形の枠上の隙間に『オーナーカード還元』と書いてください」
 危なげなく狭い枠の上の隙間に名前を書ききったレビトは、もはやお約束となりつつある了承の文字を押して文字を転写し終えた。
「そのカードを持った状態で『収納』と念じてください。もちろん口にしても構いません」

       

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