Neetel Inside ニートノベル
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 転校生が入ってきた時、男子からは喜びの歓声が上がり、女子からは少しのがっかり感と何かしらの期待の混じった歓声が上がった。
 入ってきたのは女の子。髪は腰まで伸びていて、肌は透き通るように白く、体の線から言っていかにも病弱といった感じだった。
「はい。じゃあみんなに自己紹介、頼むな」
 転校生は教卓の前に立ち、みんなの方を向いた。転校生がかわいいなんて都市伝説だと思ってた。頭を下げる動作、上げる動作、クラス内を見渡す視線、どれを見ても男子からは歓声があがる。
「川喜多 冷泉(かわきた れいせん)です。父の仕事の都合でこちらに引っ越してきました。これからよろしくお願いします」
 その言葉の後に、教室内のテンションは最高潮に達した。一人は発狂し、一人は感動の涙を流し、一人は……。とにかく凄かった。英正はというと本当は一緒になって騒ぎたかったけれど、普段のキャラクターがアレなのでそれをじっと堪えていた。
「ハハハ……お前ら他のクラスの邪魔になるからあんま騒ぐなよな。さて、じゃあ座る席はどこにしようか……」
 一瞬で教室内が静かに(主に男子が)なった。先生が注意したからではないということは言わなくても分かるだろう。転校生でしかも美少女が隣の席。これはもう至福としか言いようがない。
「さーて……」
 急に身だしなみを気にしだす奴、自分は興味無いよと言わんばかりに頭を伏せる奴、更には無理矢理自分の横にスペースを作る奴もいた。この瞬間にかけるみんなの熱意は本物だ!
 しかし、こういった場合選ばれる席というのはたいてい決まっている……。そう、既に空いている席だ。
「じゃあ日向野の隣の席に座ってもらおうかな。窓側の一番後ろの空いてる席だ」
 一瞬にして英正に注目が集まる。
(きたあああああああああああ!!!!)
『きたあああああああああああ!!!!』
 不謹慎だが、朋也に感謝した。でも、後でいっぱい謝るから今は許してくれ!
『みんなのうらやましがってる顔が気持ちいいな!』
 チュウ太は浮かれてたが、その視線はうらやましがっているなんてレベルでは無かった。むしろ嫉妬や憎悪、さらには殺意。それがこもった唸り声や視線が一瞬にして英正に向けられたので、一気に英正は酔いが醒めたようにはっとなった。どうやら友達より先に敵をたくさん作ってしまったようだ……。ハイリスク、ハイリターンという言葉の意味が初めて分かった気がした。
 そうこうしている間に川喜多は英正の席の隣に座った。が、英正はここで重大なことに気づく。
(あれ、俺友達いないのに、女の子と仲良くなれるの……?)
 単純、だがそれが最大の問題……! クラスメートの男子ともまともに話したこともない英正に、女の子でましてや転校生に話しかけるスキルなんてあるわけがない……! まず声が出るか怪しい……! 声が出たとしてもどもったり裏返ったりして最終的に引かれるに決まっている……!
『ばっかだなあ。友達に男も女もねえよ! それに仲良くなるには思い切りの良さしかねえ!』
 チュウ太はそうは言うが、英正にはその思い切りのよさすらない。
 やはり、自分には無理なのだろう。






       

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