今思えば英正の交友関係というのはすべて受動的にできたものばかりだった。
 小学生の頃はみんなあまり交友関係の線引きなどほとんどしないので、仲のいい友達は何人かいた。いつも教室で絵本を読んでいると、外にドッヂボールに誘ってくれる子とか。
 それが小学校高学年になって、中学生になるうちに、誰も自分を誘ってくれなくなった。寂しかったが、子供なりの順応能力というかそういったもので本の世界へとのめり込んでいった。
 そんな英正に声をかけてくれる人物が一人いた。それが朋也だった。
『ヒーローは誰にでもわけ隔てなく接するものなのさ!』
 そう言いながら英正にちょっかいを出してきた。疎ましく思ったのが二割で、その他八割は単純に嬉しかった。
 まあつまり、そんなこんなで自分から友達を作るなんて行動を思いついたことすらない英正には、初チャレンジのハードルがあまりにも高すぎるということだ。


 いや、むしろその考え自体がおかしいか。だって無理にチャレンジなんてしなくていいじゃないか。隣の席に可愛い転校生が座っている。もうそれでいいや。なんか満足だ。
『へたれだなあ……』
 なんとでも言えばいいさ。僕をこんなにした環境が悪いに決まっている。僕が変わるにはまず環境を変えなければならない。それは難しいことだとは考え無くても分かる。なら、今ある現状で妥協。これが最善策。
 休み時間になると、英正は自分の席にいることはできなかった。クラスの奴らはもちろん、噂を聞きつけ他クラスからやって来た、良い関係を作ろうとする男女や、彼女とオトモダチ(笑)になろうと詰め寄る男女、それに興味本位の奴らも合わさった連合軍がまるで城を落とすかの如く押し寄せてきたからだ。
 英正はしょうがなく、この日の休みという休みがつく時間は全部図書室で過ごした。これも妥協策。しかたない、しかたない……。


「日向野くん、たいへんだねえ」
 クラスの端っこで金髪のショートカットの女子が呟いた。
「日向野かよ。普通は転校生が大変だなと思うだろ。カオはみんなといつも見てるとこが違うよな」
 隣の長身でセミロングの女子が言った。
「それって、けなしてるのお?」
「褒めてるのよ。てか、その日向野の前の席のあんたが言う事じゃないでしょ」
「えへへ、そーでした」
 クラス内の喧騒は、一向に収まる気配はなかった。