Neetel Inside ニートノベル
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P-HERO
第五話:事件後。その周囲。

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「わっけ分かんねえ!? ちくしょおおっ! 弾出ろくクソっ!」
 銃を空撃ちする音が虚しく響く。英正は散乱した札束を申し訳なくも踏みながら犯人へと近づいていく。
「ひ、ひい!? 来んじゃねえ! コイツがどうなってもいいのかよ!?」
 すでに驚異では無くなった銃を人質の女の子へ突きつける。なんと哀れな姿だ。英正は歩みを止めない。
「来んなああああ!」
 終には人質を英正に向けて押し飛ばし、銃を投げつけ、札束を蹴り上げばらまき始めた。左腕で人質を打き抱え、右腕で拳銃を叩き落す。
「大丈夫ですか?」
「……はい」
 人質をゆっくりと座らせる。潤んだ目で英正を見上げる少女。目のやり場に困る格好だったので、すぐに目線を逸らす。一瞬しか顔を見なかったが、結構可愛い。しかも、見覚えがある。ちょっと考えたが、美少女を助けたことで不思議と高揚感が生まれて、どうでもよくなっていた。自分は男なんだと再確認できる瞬間だった。
『トドメはかっこ良く行こうぜ!』
「ああ。なんか、いい気分だっ」
 今猛烈に格好良いんだろうな。くぅー。悪い気はしない!
 隅っこで小さく蹲りガタガタ震える犯人の襟を左手で掴むと、思いっ切り持ち上げた。そして、そのまま運転席と荷台の境目まで行く。右手を振り上げ、一気に壁に突き出す。まるでダンボールにパンチを繰り出したかのように金属の壁は崩壊した。
「なっ、なんだあああああ!?」
「通りすがりの、お面ヒーローだ」
 右腕をそのまま運転手にぶつける。運転手はそのまま気絶した。
『ノリノリじゃねえか……』
 右腕を振り回し、穴を人が余裕で通れるくらいに広げ、そこにホスト風の男を投げ込む。助手席にいたもう一人にぶつかって二人ともノックダウン。討伐完了。僕ってばマジヒーロー。

 さて、ここで一つ問題がある。どうやってこのトラックを止めるかだ。正直、調子にのりすぎてそこまで考えていなかった。しかも、運転手を気絶させてしまった。現役高校生の英正は免許なんて持っているわけがない。暴走トラック、街を行く。だが警察の迅速な対応で封鎖線が張られており、周りにはほぼ車がない状態だったのは救いだった。
「どーしよっ!? やべーよ!! 止まんねえよおお」
『……ブレーキ踏めよ』
「……なるほど。で、ブレーキってどれ?」
『はあ……。結局かっこわりいのな。そこだよ、左の』
 運転席から素早く気絶した犯人をどけると、ブレーキを踏み込んだ。数秒で、暴走トラックは沈黙した。

       

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