数時間後、住江警察署――

 この日、住江警察署内はこの街で初めて起きた凶悪犯罪の対応に追われていた。それは下っ端の木下はもちろん、ベテランの大分も例外では無かった。
「被害者の女性と犯人の調書できました!」
 木下は不謹慎だがうきうきしていた。初めて自分が経験する凶悪犯罪。何もかもが新鮮だった。それを大分はため息をつきながら見る。
「ったく、顔がにやけてんぞ……」
 そう言いつつ右手を伸ばし、資料を受け取る。


 被害者、金上 香(かながみ かおる)。十六歳。住江高校二年在籍。本日、在籍するクラスの転校生の歓迎会に参加していたが、資金不足だったために銀行に入ったところ、偶然襲撃してきた強盗の人質に取られる。数分後、乱入してきた自称ヒーローによって救出される。外傷はほぼ無いが、念のため病院へ搬送。

 加害者、保谷 澄人(ほたに すみと)。二十三歳。ホスト。なんらからの方法により拳銃を入手(現在調査中)。そこで思い立ち犯行におよんだ(本人談)。また、精神の錯乱有り。意味不明な供述を続けている。

 最上 三郎(もがみ さぶろう)。十九歳。無職。同上。

 糟屋 一樹(かすや かずき)。二十歳。コンビニバイト店員。トラックを運転し、犯行に加担。

「人質が無事だったのは喜ばしいことだが、この意味不明な発言ってのはなんだあ?」
 読み終わった資料を机の上に投げ捨てて大分は言った。
「本当に意味不明なんですよ。銃は最強だーとか金は俺のものだーとか」
 それを木下は拾い、丁寧にまとめる。
「……ふん。気が狂ったのか」
「まあ、これから専門家も来るみたいですし、それからですね。それよりも、あの後すぐ立ち去った仮面のヒーローに感謝状を……」
「まあたそれか……。ったくこれだからお前は――」


 その日、住江警察署内が静になることは無かった。