Neetel Inside ニートノベル
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 次の日、住江高校――


 話の話題はどこを見ても昨日の事件のことばかり。英正のクラスも例外では無い。更に言えば、校内で一番騒がしいクラスは英正のクラスだ。それもそのはず、この教室には台風の目というべき存在――
「カオルちゃん昨日は大丈夫だったー!?」
「あんなことになるなんて思わなかったよ……。本当に平気?」
「うん! だいじょうぶだよー!」
 金髪のショートカットが似合う女の子、金上 香が居るからだ。そして彼女は英正の前の席でもある。噂の転校生、川喜田が隣の席で話題の少女、金上が前の席という状況下で人が英正の席の周りに集まらない道理は無かった。

 話題は見事に二極化されていた。

 前の席では事件の話、隣の席では「転校生を歓迎しようの会」の話。英正は机に顔を伏せて寝ている振りをしつつも、今一番気になる存在である川喜田の話に耳を傾けていた。
「昨日は大変だったねー」
「……そうですね」
「また今度ちゃんとやり直そうね!」
「……ありがとうございます」
 数人の女子と川喜田の辿々しい会話が続く。川喜田はとても口数の少ない子だった。そして誰にでも敬語を話す。何度も周りが敬語を止めさせようとするが、どうにも直らない様子だ。そして、本題である「転校生を歓迎しようの会」のことだが、どうやらあの事件で中断されていたらしい。まあそれは当然だろう。流石に同級生が人質に取られてまで歓迎しようともされようとも誰も思いはする訳がない。
「あ、そーだ! 最初のお店で一緒に買ったストラップ付けてきた? 赤い星のやつ!」
「……」
「わー! やったー!」
「私達のとおっそろーい!」
 おそろいのストラップ……か。しかし、女子は何故新しい友人が出来るとお揃いの物を付けたがるのだろう。女心はよく理解できない。
「これ、友達の証だよ!」
「……友達」
「うんうん! ずっと友達だー!!」
「……」


 切なくなってきたので、そのまま寝ることにした。

       

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