事件解決後、某所――


 その場所には何時ぞやのリクルートスーツにメガネといかにもインテリそうな女と数人の黒服の男達が居た。女はイライラした様相で、組んだ腕の間で指を忙しく動かしていた。
 不意に、遠くからカツリ、カツリと足音が聞こえてきた。その音に黒服の男達は身構える。女はただ顔をそちらに向けた。

「お待たせ致しました」

 暗闇から男の声が聞こえる。が、暗すぎて顔は解らない。
「遅いですね。三十二秒の遅刻です。殺されても文句は言えませんよ? それとその気持ち悪い格好もどうかしたらどうですか?」
 女は辛辣な態度で言った。
「ふふふ。相変わらず手厳しいですねえ。まあ私はドMですから寧ろご褒美です」
「はぁ……。どうしてこう、貴方達は扱いにくい人ばかりなのでしょうか?」
「一癖、二癖あるのが私達ですのでねえ。まあ、ご愛嬌ということで」
「話すのも疲れますね。御託はここまでにしておいて、さっさと報告を」
「残念ですねえ。もうちょっとお話したいのですが。まあお仕事ですし。では報告を」

 そう言って男は女にUSBメモリを手渡した。女はそれを受け取るとポケットにそれを仕舞った。

「その中にはこの街のヒーロー(笑)のここ一年のデータが入っています。確証を得るのに一年掛かりましたが、彼が鍵となる『寄生主』で間違いは無いと思われます」
「では、これであの『包帯男』がこの街にいることが確定というわけですね」
「ええ。ですが今日の彼はいつもと違って恐ろしかったですねえ。私は彼とはできれば殺り合いたくない」
 男は大げさに身震いしてみせた。
「あなたが恐怖を覚えるとは、それほどの実力が?」
「実力は私が圧倒的に上でしょう。ただ……」
「ただ……?」
「……いえ、この場で言うのはやめましょう。また、あなたに会う理由にもなりますしね」
「なら聞かなくても結構です。……分かりました。あくまで『包帯男』がメインですが、我々の驚異になる場合は最終手段として『寄生主』の殺害を許可します」
「もう、いけずですね……。それとよろしいのですか? 会長はそれをお許しになりますか?」
「大丈夫です。あの御方もご了承なさるはずです」
 女はそう言った後に「ではこれで」と素っ気なく一瞥し立ち去ろうとした。だが何かを思い出したらしく、数歩進むと男の方に振り返った。
「ああ、そういえば、058号がこの街に到着したようです」
「ほう、戻ってきましたか。これは心強い」
「『対抗勢力』のこともありますし、彼の活躍に期待しましょう。まあ前のように失敗しなければいいのですが」
 ふっ、と女は嘆息した。
「以上です。ではまた」
 その言語を最後に、こんどこそ女は周りの側近を引き連れてこの場を後にした。




「ふふふ、『ではまた』ですって。無意識なのか、故意なのか。ちょっと嬉しいですねえ」
 男はそう呟くと、鼻歌まじりに闇の中へ消えていった。