Neetel Inside ニートノベル
表紙

見開き   最大化      

「うわっ、もう八時か。結構長くやらせちまったな。ご苦労様」
 英正もその言葉に合わせて時計を見る。確かに八時。しかし自分の感覚ではそれ程時間が経っているとは思わなかった。集中してたのか、はたまた先程のことがあったからか……。
「おい、高校生。こっちこ~い」
「はい」
「ほれ、今日は悪かったな」
 図書館のお姉さんはそう言ってにそっと三千円を渡した。
「え?」
「バイト代だよ。今日は私の仕事の半分はやってもらったからな」
 は、半分て……。確かになんでこんなに返却の本があるんだと思ったが。しかも途中から入荷したばかりの様な本もあったし……。

 まあでも三千円だ。これはほぼ無趣味の高校生、英正にとっては相当な金額。昼飯代が一週間以上は保つ。だから素直に喜んでおいた。



 外はもう真っ暗だった。でも空気は澄んでいて、気持ちいいくらい晴れていた。時折吹く弱い風が肌に当たるのが妙に心地良い夜だ。

 この瞬間だけを切り取って見れば、ここ数日間の出来事が夢幻に思えてくる。

 でも……

 両足に力を込め、走り出す。五十三歩目で地面を蹴り上げる。体は宙に浮く。今度は一軒家の屋根を蹴る。更に加速し、まるで砲弾の様に商店街上空を飛ぶ。そして、一番高いビルの上に着地した。

 この力だ。これが英正を現実へと引き戻す。でも――

 ビルから街を眺める。街の光が綺麗なコントラストを作っている。英正はカバンからお面を取り出すと、それを着けた。少しボヤけた視界から見た街は、さらに光が萌えてとても美しかった。

 ――英正はこの街を、力を使って守った。悪い気はしない。それに、自分の足りないところを埋めてくれているような、そんな感情もあった。

『ヒーロー、やってみるか?』
「……考えとく」

 それは今までで一番前向きな解答であり、しかもその後もそれが面倒だなんては思わなかった。



 いや、思っている暇がなかったと言うべきか。



「やっと見つけたぞ!! 仮面の英雄……!!!」


 英正は、驚き振り返った。


       

表紙
Tweet

Neetsha