「誰だ貴様は!?」
男の怒号が響き渡る。
「……」
腰には日本刀。マフィアを思わせる風貌。そして見る誰もを惹きつけるであろう、顔全体に巻かれた包帯。
「ほ……包帯、男……」
何故、何故このタイミングでこいつが!?
戸惑う英正をよそに考える暇も与えず、包帯男は剣を抜く。
一瞬、包帯男の姿が消える。いや、左に高速移動した? と、同時に太刀を横一線した男が包帯男の元いた場所に現れる。
「獲物を横取りするな……っ!」
「……」
こいつら……化物か!?
聞こえるのは剣を交える音、風をきる音、地面を擦る音。そして、時々二人の姿が現れ、また消える。英正は怯えることしか出来無かった。
絶対に死ぬ。ヒーローなんて、やっぱり出来無かった。確信した。やっぱり自分は、ただのヘタレだ。
『今のうちに逃げるぞ!!』
英正は我に返った。そうだ、逃げよう。死ぬよりよっぽどましだ。プライド? 糞喰らえ。死んだら何も残らない。そう、自分に言い聞かせる。
二人が戦っている今しかない。英正は自分の持てる力を全て逃走に回す。立ち上がり、二歩目で最大スピードになり、その勢いで屋上から飛ぼうとする。
「逃がさん!!」
「……」
だが、甘くはない。背後から二つの殺気が近づいてくるのがわかる。それと同時にやってくるのは死の恐怖。
駄目だ。やはりここで終わる。
そう思った次の瞬間に、背後を強烈な光が包みこみ、ものすごい衝撃と、鼓膜を破る程の爆音が響き渡った。