Neetel Inside ニートノベル
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 暗闇の中で、何かが蠢いている。英正はそれをじっと見ていた。見ていた、というよりは、気づいたら視線をそこに置いている自分がいた、と言うべきか。まあ何はともあれそれが気になるので目を凝らす。闇に慣れてきた瞳がその全体図を映し出す。


「っ!?」


 その光景に英正はただ驚愕した。

 死体を、喰っている。その外見は、およそ記憶に該当するものが無い生物。
 そして、遅れて目に付く死体の細部。その頭部を見て、血の気が一気に引いた。
 赤く濡れ、肉が抉れている。だが微かに残る面影。長年の付き合いだ。それだけでも今は亡き親友だと確信を得る十分な情報だった。


 嗚咽。息が出来ない。声も出ない。体が焼けるように熱くなる。


 その場でうずくまる英正に、鋭い視線が降り注ぐ。そして、正体不明の生物はゆっくりと英正に近づいてくる。冷たく光る爪が、血を滴らせる牙が、近づいてくる。


「あああ……ああああああああ」


 言葉にならない恐怖がこみ上げる。腕に触れた爪が肌をえぐる。牙が、肩に食い込む。


――ぐしゃり


 気持ち悪い音が聞こえて、何か滴り落ち――



「――ああああああああああああああああ!?」


 突然、目の前の景色が変わる。薄暗いの変わらないが、あの正体不明の生物は消えていた。ハッとしたように腕を確認する。

 ……ある。痛みは……無い。腕を試しまわしてみようと肩を挙げた時、背中に激痛が走った。


「んあっ!?」


 痛みを堪えるように体を抱いてうずくまる。
 その直後、パッと周りが明るくなった。

「大丈夫か!? 何か叫び声がしたが……」


 誰かが、来た。というよりも入ってきた? ならばここは室内? そして自分は柔らかい物に包まれている。これは……布団? そしてこの声……聞き覚えがある。

「大丈夫か? 日向野君?」
「おい、平気か?」
 交互に男と女の声。そして自分の名前を呼ぶ。痛みを堪えつつ、ゆっくりと顔だけ上げる。

「……生徒会長さん?」

 背中の痛みは、若干収まってきていた。


 







       

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