Neetel Inside ニートノベル
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「日向野君。君をレジスタンスに迎え入れたい」


 その言葉に、英正は耳を疑った。自分がレジスタンスの一員に? 
「え?」
 それは思ったままに口から出た。


「ほら、また言い方が悪い」


 姐さんは溜息混じりに生徒会長さんに言う。また誇張表現か。ならば何を誇張した? 迎え入れたいのではなく、準レギュラーのような立ち位置になってくれということか? それとも、友達になってくださいを中二病的な言い回しにしたということか?
 

「そうだな。君はレジスタンスに入らなければならない」


 そもそも誇張表現では無かった。言葉が要求から、義務になった。

「えっ? えーと、えっ?」

 何故義務になった。そもそも自分にそこまでさせる権力を彼らが持っていると言うのか? まあ多少は生徒会という組織柄所有しているだろうが、彼らが言う組織に強制加入させるほどの力を持っている訳がない。では何故? その疑問を口に出す間も無く、生徒会長さんは口を開く。

「思い出せ。今日君を助けたのは誰か。今のままで君は上座を守れたのか。……君は弱い」

 違う。これは義務なんかじゃない。脅しだ。上座を守れたのは英正より強い自分達が居たからだ。貴様は自分達に借りがある。命を助けた借り。返すためにこの組織に命を預けろ。そう言ってる。そんなもの……まかり通るか!!! 

「私達は強く出来る。栄花君のように」
「っ!? 朋、也……みたいに……?」

 反論が出かかった喉を鷲掴みにされた感覚。そしてそれを食道へ押し戻された錯覚。それほどの衝撃。どうしてここで彼の、親友の名前が出てきた。

「彼もレジスタンスの一員だった。彼を失ったのは戦力的に、もちろん精神的にも最大の損失だ。だが君が入ればそれを埋められる。いや、それ以上だろう」


 彼は憧れだった。特別優秀というわけではない。その観点で言えば大宅のほうが断然完璧に近い。ただ、上手くは言えないが彼は何かを持っていた。だから朋也は理想だった。彼のように成りたかった。自分に力が宿った時、正直興奮した。状況が恐怖を強調していたが、確かに気持ちは昂ぶっていた。強盗犯を捕まえたとき、金上を助けたとき、怪物と戦っていた時、自分は朋也になっていた。




 そう、朋也に。それは英正がヒーローになったのでは無く、ヒーローだった朋也になっていた。コピー、模造、猿真似。全ては水に映った虚構。自分が、自分では無かった。


「俺達は君をヒーローに出来る」


 この言葉にどれだけ英正を魅入る力があっただろう。以前チュウ太は言った。『ヒーロー、やってみないか?』それを渋ったのは、自分に責任があったから。すべてが自分の意志次第でどうにかなってしまう。不確定要素。しかし、今目の前にいる彼等は自分をヒーローに出来ると言う。つまり、自分がハイとだけ言えば英雄に慣れてしまう。そこにはどれだけ彼等を信用できるかとう要素も含まれるが、そんなのは関係無かった。


 新しい自分を手に入れる。


 それが、答えだった。

       

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