Neetel Inside ニートノベル
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 そして、もう一つ。これは英正の勝手な思いなわけで、自分に有益なことではないのだが――
「――でね~! もう本当に可笑しくって。レーセンちゃんはどう思う?」
「……きっと、頭が湧いていたんですよ」
「ぶっ! 言い過ぎだぞレーセン~~」
 何があったか知らないが、川喜多さんと米村さん、金上さんが仲良くなっていた。人を寄せ付けないようなオーラを醸し出していた川喜多さんがクラスメートと談笑(といっても表情は変わってない)している姿はとても微笑ましく新鮮だった。

 ふと以前、放課後の時にあった出来事を思い出す。

 英正が拾ったキーホルダーを、彼女が奪い取ったあの日。彼女は何かを持つことは辛いと言った。その時は何が言いたいのかさっぱり分からなかった。だが彼女を見ているうちに分かったことがある。彼女は人との繋がりを避けている。最低限のことを除いて、彼女が他人と会話をするのは転校初日以来見てはいなかった。彼女が異様に繋がりを避ける理由は分からない。ただ、彼女がしてるいることはきっと自衛の為なのだろう。辛いことから逃げいている。そういうことなんだろう。

 そう、だから今の彼女の姿はとても新鮮で、微笑ましい。そしてあの日のキーホールダーは彼女のペンケースに付いていた。
 変化。彼女の中で起こった変化。それが気になって仕方がなかった。逃げることを辞めた、その理由が。

「……?」
 ふと目があう。英正は実に滑らかかつ今まで他の場所を見ていたかのように目線をずらした。これは長年のボッチ生活で編み出した全然見てないよカモフラージュである。世の中には目線が合うだけで攻撃を仕掛ける奴や、舌打ちをする奴がいる。そいつらから身を守るなんともまあ惨めな能力なのだ。

『いつか、理由を聞ければいいな』
(……)
『俺は応援するぜ』
(チュウ太……)
『おう』
(だから心を読むな!)


 この一週間は特に何もなく平和だった。

 そしてその一週間が過ぎた今日、一通のメールが届いた。




 

       

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