Neetel Inside ニートノベル
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 戸を開けると光が闇を照らした。先程まで暗闇にいたので目が慣れるのに少々時間がかかった。その間に生徒会長さんは英正にさっさと部屋に入るように促した。目を擦りながら室内に入り、幾らか視力が戻ったところで辺りを確り見渡す。
 室内は暗幕が窓という窓全てに掛けてあり光を完全にシャットアウトしている。不法に入り浸っている事に対する配慮だろう。そして室内に居たのは三人。
「うっす」
 まず長野の姐さん。ここは大して驚きもしない。そりゃあスナイパーライフルを持ちながら公園を走り回っていれば関係者とは予想がつく。
「おう、来たか」
 次に生徒会顧問の山下先生。これは結構驚いた。まさか生徒会の最高管理責任者たる先生が一枚噛んでいたとは。世の中は何があるかわからない。
「遅い!」
 そして最後に、上座 空。ある程度予感はしていた。あの公園で一件での立ち振舞は、正直正常な人間の取る行動ではない。驚きの後に来たのは、やっぱり、という複雑な思いだった。何故って、英正もまだ十七歳だがそれより年下の上座さんがこんな現実離れしたことに関わっているのだから。こんなにも知らない世界があったのだから。
「じゃあ、日向野君は適当に座って。そしたら先生、始めましょうか」
「うし。じゃあ日向野、もとい新オメンダーを迎えての初めての会議を始める。何かある奴は挙手!」
 みんなお互いがお互いを見つめ合うだけで誰も動こうとしない。数秒、沈黙が続いた。
「おし、じゃあ会議終わり。お前ら気を付けて帰れよ!」
「えっ!?」
 英正は思わず声を上げてしまった。それに全員が何だコイツという目を向ける。
 会議にかかった時間、体内時計でおよそ一分。その間に交わされた言葉は零。そりゃあ声も出てしまう。これでは会議と冠したただのにらめっこ。
「い、いい加減にしてください! さっきから何なんですか! 僕は、こんなことの為に、来たんじゃないっ!」
「ほらあ、だから別に呼ぶことないって言ったのよ」
 長野の姐さんはソレ見ろと生徒会長さんに言った。それを山下先生はやれやれと言った感じで傍観する。上座も上座で携帯電話を弄りだす始末だ。
「まあ、今回は面通しの意味合いが強かったしね。つまり、気楽に行こうよってことだよ」
 仮にもヒーロー活動をしていた人達が揃いも揃ってこんなにも悪い意味で適当だなんて。疑念が、不信感が湯水の様に湧き上がる。
「こ、こんなので僕は本当に――」
「愚問だな」
 全部言い切る前に生徒会長さんは言葉を制した。
「俺はお前を絶対ヒーローにしてやる。だけどそんなに気負っても成功するものもしないと言ってんだ。それに、まだ準備が整ってないしな」
「じゅ、準備!?」
「何事も下準備が大事なんだよ。まあ、今後の予定としては『待機』。もう一週間もしないで夏休みだし、休日を満喫しててよ」
『ここは従っとくしかないな。お前が何言ったって状況は変わらんよ』
(なんなんだよ……)
 解散解散と先生は手を叩いて英正達に帰るように促した。姐さんは俺の肩をポンと叩いてそのまま生徒会室を出ていった。上座さんもニヤニヤしながら出ていった。英正は少し間を開けて先生と生徒会長さんとも先陣ともある程度距離を開ける感じで部屋をでた。
 初夏の夜はまだ少し涼しかった。だが清々しさなど微塵もない。帰りは校門をよじ登って帰った。

       

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