Neetel Inside 文芸新都
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千文字前後掌編小説集
私ココ

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 私ココ。もうすぐ五歳。
 趣味はパパをいじめることといたぶることといためつけること。

 私ココ。好きな人が出来たの。
 同じ幼稚園に通うイケメンの男の子、ダイチ君。
 ダルビッシュに似てるってパパは言う。
「パパとどっちが好き?」という答えに私は「ダイチ君」て即答してた。
 最近はそれも面倒で無視してるの。

 私ココ。歌が好き。
 初めて聴く歌でも二番から歌っちゃう。
 モトリー・クルーの「キックスタート・マイハート」でノリノリになってたらパパが喜んでた。
 でもプリキュアやアイカツの歌の方がずっと好き。

 私ココ。弟が産まれたの。
 ガラスの向こうで泣いてたの。産婦人科で借りた絵本を読んであげた。
 聞こえてなかっただろうけど笑ってた。
 あとでママの病室に弟が来たの。
 パパがだっこしてた。「ココの生まれた時とそっくりだ」って言ってた。
 私もだっこしたいけど危ないからダメって。
 私なでなでしたの。
 指をぎゅっと握ってくれたの。
 赤ちゃんってすごく大きな声で泣くの。
 いないいないばあってたくさんしたの。

 パパと二人で家に帰ってアンパンマングミ食べたの。
 おっとっとも食べたの。
 ママのお父さんとも電話でお話したの。
 パパが録画した「シン・ゴジラ」を見ようとするから止めたの。
 たくさんパパで遊んだの。
「人間ブランコは確実に次の日腰にシップ貼らないといけなくなるから禁止」ってパパは言ったの。
「ママは?」「一週間入院だよ。ケンちゃんもその時一緒に帰ってくるよ」
 ケンちゃんは弟の名前なの。
「病院いこ?」「もう遅いからダメだよ」
 私おもちゃのネックレスを病院に忘れてきたの」
「ネックレス取りにいこ?」
「明日パパが取りにいくよ」

 私はたくさん遊びたかったの。
 いろいろわがまま言ったの。
 そしたらパパは「ママがいないからってわがまま言い過ぎだよ」って言ったの。
 私泣いたの。
 ママがいなくて寂しくて泣いたの。
 弟のケンちゃんにも会いたくて泣いたの。
 パパと二人が嫌で泣いたの。
 ママにぎゅーってしてもらいたくて泣いたの。
 ママ、ママ、ママ、ママ、って泣いたの。
 そしたらパパも泣いたの。
 一週間二人だけど頑張ろうね、って泣いたの。

 それから二人でお風呂に入って。
 それから二人でご飯食べたの。
 パパがウィンナーをボイルしたの。
 八本ボイルしたの。
 私七本食べたの。
 ごはんにふりかけかけて食べたの。
 ママに会いたいの。
 エビの天ぷらも食べたの。
 ママにチューしたいの。
 パパのごはんを取って食べたの。
 ママが大好きなの。

 私は歯磨きして寝たの。
 パパは起きて洗濯物してるの。
 ケンちゃんは赤ちゃんだからいっぱい泣くの。
 私ココ。もうすぐ五歳。
 赤ちゃんじゃないけどいっぱい泣くの。
 ママ、おやすみ。大好きだよ。
 パパ、おやすみ。明日もたくさん遊んでね。

(了)

       

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