Neetel Inside 文芸新都
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千文字前後掌編小説集
ガンダムごっこ

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 娘の通う幼稚園で近頃ガンダムごっこが流行っている。参観日に園に着くなり「サイコガンダムだー!」「ビグザムだ!」「デストロイだ!」「ウォドムー!」と園児たちに騒がれた。とにかくでかい機体で私を呼ぶ。ウォドムはなんかやだな。
 自由時間にはそれぞれ好きな機体になりきっている。νガンダムらしい娘のココが「行け、ファンネル!」と叫びながらゴムボールを好きな男の子に投げつけている。私の足元に転がってきたボールを拾い上げ「ファンネル、落としましたよ」と娘に返してやる。
「お父さんはほんとは何のモビルスーツなの?」
「インフィニットジャスティスだよ」
「ああ、あれね」わかってないだろ。
 縄跳びをヒートロッドにして振り回す園児が先生に怒られている。キックボードをバイク戦艦に見立てて走行している大柄な園児の目には狂気の光が宿っている。園児の妹が家からLEDの飾りを持ってきて身にまとい、ユニコーンガンダムを気取っている。決してビーム兵器を飛ばそうとしない硬派な集団は「俺ら、鉄華団っすから」と言っていた。
 ダンスの時間では最新作「ガンダムビルドダイバーズ」のOP曲を歌いながら踊っていた。ラップ調の早口の歌詞を歌いきれる園児は少ない。
「今の子たちはすごいですよね。私なんて初代しかわからなくて」ダンスを見学しながら園長先生がこぼしていた。
「知っているだけすごいじゃないですか。どんな機体に乗りたいとかありますか?」
「ガルマ・ザビ」

 玉転がしに似た競技「アクシズ押し」に保護者も参加した。どうにかして地球に核の冬がやってくるのは阻止したが、疲れ切った私はインフィニットジャスティスのくせにフェイズシフトダウンしてしまった。
「お父さんてヅダじゃないの?」
「ウォドム呼ばわりよりはいいかな」
「おうち帰ったらプリキュアごっこしようね」
「疲れてるんですけど」
「やっぱりヅダだ」
「ウォドムー! バイバーイ」生意気な園児たちが私に向かって叫ぶ」
「違うでー! お父さんはイニニニットジャジュジュジュなんやでー!」言えてない。

 今時の幼稚園はだいたいどこもこんな感じです。
(了)

       

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