Neetel Inside 文芸新都
表紙

千文字前後掌編小説集
日常が干からびていくよ

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 気の触れた元恋人の家を訪ね、その姉と寝ている。妹と随分歳の離れた彼女はもうすぐ五十歳で僕とは二十近い年齢差があるけれど、胸の形がとても綺麗で彼女を抱くことに僕のペニスは遠慮がない。僕らが抱き合う和室からも見える居間では元恋人がテレビを見ている。プロ野球中継のデーゲームが映し出されている画面を見ながら笑い転げている。0-0の行き詰まる投手戦が繰り広げられているのに。
「今日は機嫌がいいみたい」と妙子が言う。元恋人の名前を忘れていたので訊ねると、勘違いした彼女は元恋人ではなく自分の名を名乗ってしまい、それ以上は僕も聞き直せなくなってしまった。
 彼女の大陰唇が大きすぎるので、パンツを履いているとどのように収納されるのだろうかと気になって仕方がない、が聞けないでいる。脱ぎ捨てられた下着類は既に丁寧に畳まれている。
 五年前に付き合っていた元恋人は浮気を繰り返していた。知らない男と歩いているところや、知っている男と寝ている場面やらを何度も見た。僕にはそれらが大したことに思えなかったので、責めることもしなかったし、また僕も平気でいろんな人と寝ていた。たまには男とも。別れた理由は互いの浮気ではなく、職場を移った彼女と会う機会が減り、何となく自然消滅していったからだった。彼女の気が触れたのもその後のことだ。
 妙子は何だか泣きそうな顔をしている。「痛い?」と聞くと首を振るのでもう少し強く突くと、これまで抑えていたらしい喘ぎ声が大きく漏れて、元恋人が僕らの方を一瞥してきた。何となく会釈をすると彼女も返してくれた。けれどすぐに僕らは互いに気の触れた行為に戻り、笑い転げたり腰を動かしたりしていた。
 新しく付き合い始めた男は彼女の浮気癖を許さず、暴力を振るったり監禁したり爪を剥がしたりしたそうだ。姉の通報を受け男は逮捕されたが、彼女の心は壊れてしまった。
「あなたが甘やかしすぎたから」とあまり責める風でもなく妙子は言う。甘やかした覚えはなかったが、厳しく接した覚えもまたなかった。
 射精を終えて疲れた僕は少し眠った。十代としようが五十近くの人としようが大抵同じ流れで同じ最後だ、と思うとどっと疲労感に襲われた。
 目が覚めると包丁を持った妙子が元恋人の背後に立ち、どうしようか迷っている様子だった。僕は起き上がってその後の展開がどうなるのかを楽しみにして眺めていた。
「あんた、頭おかしいよ」と妙子が言い、包丁を台所に直しに行ってしまった。
 その後妙子は夜の仕事に出かけたので僕は元恋人と笑い合いながらセックスをした。

(了)

       

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