Neetel Inside 文芸新都
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 初めの一悶着は部活を決める時。
 あたしは部活を積極的にやる気なんて全く無くて、部員が少なくて活動をしなくていい部活を探していた。そこで、部員数二名で一人は登校拒否者、一人は留学中という夢のような部活、生物部を見つけてそこにしようと思った。よっしーは元々サッカー部のマネをやるって言っていたから問題は無くて、花音とセーラ様はバスケ部に行こうかなって言っていたけれど、ナギーがバレー部にしないかと譲らなかった。そしてあたしもバレー部に誘われて断るのに骨が折れた。
「マイちん絶対バレー楽しいって!生物とか何すんのかわかんないもん」
「えーあたしもう運動部はちょっとさー」
「てかバレー部に皆で入ろうよー、うちらだったらバレー部牛耳れるって」
「あははーそれ楽しそうだけどさー、やっぱ私バスケだわーごめんねー」
 お昼休みにご飯を食べながら、完全に四対一になったナギーは少し不機嫌になった。それを見て花音が、いいじゃん人それぞれで、と言って、場は険悪になった。はっきり言って花音の言葉は至極真っ当で、正論なのだけど、あたしは肯定出来なかった。肯定したら余計にこじれるし、面倒になるに決まっているから。よっしーとセーラ様が必死に場の空気を取り戻して、あたしもそれに乗っかって何とかその時間をやり過ごした。

 その日の夜、あたしがお兄ちゃんと車で喋っていると、ナギーからあたしとセーラ様にメールが来た。開いた瞬間、文字の多さで陰鬱になって、読みたくなかった。でも放置するわけにもいかないので、読むと、花音を誹謗する内容で、もっと陰鬱になった。花音の昼休みの発言を挙げて、酷いだとか、最初は自分とセーラ様とあたしのグループだったんだとか、自分の名前を付けて自分らの島に入ってきたくせにとか、錯乱でも起こしたかと思った。
 何がしたくてこのメール内容を書いたのか、これであたし達が自分の味方になるとでも思ったのか。
 顔を顰めてメールを読み、少しリクライニングが倒れたシートに寄りかかるあたしに、お兄ちゃんも察したのか、どうした、と声をかけてきた。あたしが携帯を渡すと、お兄ちゃんはそれをざっと読んだ。
「何こいつ、島ってウケんだけど。意味わかんねぇ」
「あたしも意味わかんないよー、どう返せばいいのこれ?」
「島って、何、舞ら島なの?」
「島なわけないじゃん!」
 それから結局メールの返事は思いつかなくて、あたしとお兄ちゃんの間でナギーは出島というあだ名に確定した。車の中でお兄ちゃんに愚痴を言って、お兄ちゃんの愚痴を聞いて、コンビニに寄って、お兄ちゃんにフェラをして、時間になった。
 お兄ちゃんに家の近くまで送ってもらって、その後セーラ様からの的外れっぽいメールに合わせてあたしも返信をした。核心には触れず、それでもナギー、花音双方の肩を持たないセーラ様のメール内容を参考にした。それに対して、ナギーから長いメールが返って来たけれど、今度こそはシカトをした。

 家に帰ると珍しくお母さんが帰って来ていて、祖父母の家に行っていたと嘘をついた。お兄ちゃんとはコンビニで買った物を食べただけでお腹が減っていたが、祖父母の家に行っていたと嘘を付いたから夕飯は食べれなかった。でも、お母さんが飲んでいる横でそのツマミを少し貰ったのと、先ほどのメールで胃がいっぱいになった。


 
 第二の一悶着はあたしが居ない帰り道で起きていた。
 そもそもあたしは電車の方向がよっしーと同じで珠に一緒に帰る。生物部はいつでも帰り
放題なのだが、よっしーはそういうわけにはいかず、あたしが残っていた時は一緒に帰るという形だった。
 生物部は理科実験室の隣の教員待機室を部室としていて、そこの鍵が与えられ、自由に過ごせた。教員待機室には冷蔵庫もソファーもあり、極楽は近い場所にあったと喜んだ。ただ、小汚いのが難点だったが。この大事な場所を穢されたくなくて、友達には何も教えなかった。
 あたし達と同様に、ナギーとセーラ様、花音が同じ方向に帰っていた。その三人が普段どのように帰っていたのかは知らない。興味もあまりない。それでも普段通り皆部活に行って、帰宅して、次の日学校に来たらあたしとよっしーはセーラ様と花音に普段使わないトイレに連れて行かれた。話の内容は昨日ナギーがいつもの待ち合わせ場所に居なかったから待っていたら、先に帰っていたということだった。
 ぶっちゃけ、何が問題なんだ。先に帰るくらい。確かにメールしなかったナギーにも非はあるかもしれないけれど、目くじら立てることじゃないと思う。三人で喚いている横で、個室トイレの壁に寄りかかって、煙草を吸いたいと天井を見上げた。

 さらにあたしの居ない所で面倒事は起きた。

       

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