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2011/05/23
背中からコウモリの羽が生えたアーノルド・シュワルツェネッガーらしき人が腕を組んで僕を待っていた。シュワちゃんが歩き始めたので、後から付いていくと目の前に底の見えない大きな穴と飛び石地帯が現れた。二人で僕の身長以上に間隔のあいた足場に飛び移るが、足場は重心から離れるほどに傾き非常に不安定で、バランスを崩して穴に落ちてしまった。気付くと穴の前に戻されていた。ゼルダの伝説みたいなシステムだなと(ハートが減らない分良心的だとも)思った(そもそもハートなんてない)。
足場の真ん中をキープすることを第一に考え慎重に渡ってみたり、思い切って一気に走り抜けようとしてみたり色々試してみたけれどうまくいかなかった。何度も落ちては先へ行こうとするシュワちゃんの背中を見て、何か彼は無駄なことをしているんじゃないだろうかと物思いにふける僕はその疑問を口に出すべきか出さないべきか迷っていた。多分あの羽はただの飾りなんだと自分に言い聞かせて足場に飛び移ろうとすると、着地するはずの地面がどんどん遠ざかっていき、今度は白濁した空に開いた穴に吸い込まれてしまった。
布団のぬくもりを感じ、目を開くと天井が見えた。まだ残っている眠気とだるさを体から引っぺがし、今の夢を忘れないうちに夢日記を書かなければならないという使命感に突き動かされ、名残惜しいぬくもりから這い出てノートを手に取り夢の内容を断片的にメモした。書き終えたところで今日は大学に行く日だと気付いたので、出かけることにした。玄関から庭に出ると頭に植物のツタが絡まってしまい、剥がした時にはけっこう時間が経っていた(と感じた)。
公園の砂場を踏みにじって門をくぐり、建物の中へ。三階で友達らしき男と話していると、窓の外で人の右手が向こう側を向いて落ちていったのを見た。二人で窓の下を覗くと、さっきの右手の主が洗面場のコンクリートの上で破裂しているのが見てとれた。友達はこれからサークルがあるらしいので、小走りでどこかに行ってしまった。もう大学にいる理由は特にないなと感じ、ここにこれ以上いるのは自分の惨めさに餌を与える行為だと思ったので、家に帰った。
庭に母がいて、僕に緑と赤で彩色を施された二枚のチケットを見せてくれた。懸賞で当たったらしく、何かよく知らない街への二泊三日の旅を提供する代物だった。土日は暇なので、行くのはやぶさかでないという意思を伝えると、さっそく荷物を(なぜかスーパーマーケットの袋で)まとめて列車に乗った。
目的地に着くと、砂の上に立ち並ぶ薄黄色の土壁や、行き交う人の上着とも下着とも区別がつかない服の刺々しい色合いが訴えるあからさまな異国感に戸惑った。先手を打たれたものの舞う砂埃でその攻撃は和らげられ、とりあえず言葉は通じないだろうからどうしようかと考えるほどの余裕はできた。
しばらく歩いたので崩落した像の頭の上に座り込んで一休みしていると、茶色いローブに覆われたおばあさんが突如出現した(と思わせるほどに接近を気付かせなかった)。その歩く速さは機械的と言えるくらい一定に保たれ、じっと見つめても何一つ動揺の気を見せることなく変化がなかった。そして丸みを帯びた手で母の荷物であるスーパーの袋を、さもそれが当たり前であるかのように掴んで持っていこうとした。母は気付いておらず、僕もなぜかそれが当たり前のことのように思ってしまっていたので不思議そうにぼんやり見ていたが、ふと我に返って「ヘイ!」と裏返った声を発した。おばあさんは驚いて手を離し、通行人も何人かこちらを向き、母は僕を見てから、おばあさんの方を向いた。おばあさんは袋から手を離したポーズのまま固まり、被害者のような眼だけがこちらを向いていた。そして僕も彼女が被害者のような錯覚に陥ってしまい、非常に居心地が悪くなったので荷物を持って母と一緒にさっさとこの場を離れることにした。
宿に着いて、どうやら三階の部屋に泊まることになっているらしいが、その部屋に行くには階段を二つ上り、一つ下りなければならなかったので階層を決める基準って一体何だろうと少々混乱した。部屋は和風で畳が敷いてあり、日本人の女性が一人座っていた。どうやら母の友達らしく、二人はおしゃべりを始めたので僕は寝っ転がって天井の木目を見ていた。やがて食事が運ばれてきたので起き上がり、その黒い器に収まっている物を明かそうと覗きこんだ。光を通さない赤色の汁の上に油が漂っているのを見て、その器の底に何がへばりついているか安易に想像できた。その汁を畳にぶちまけて確認すると、思った通り黄色い麺の塊が露わになった――ジーザス、坦々麺だ!
そこで現実に戻ってきた訳なのだが、残念ながら夢の内容を書いたノートを夢の中に置き忘れてしまうという失態を犯してしまったので、最初のあたりはかなり記憶が曖昧で詳しく綴ることができなかった。明日は気をつけたいと思う。