Neetel Inside 文芸新都
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麗しき、殺意。
救いなき、部屋。

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 目が覚めると、そこは知らない天井だった。隣には知らない女がいて、その寝顔はどうしようもなく美しく、醜かった。体を起こす。壁にはアンティークな時計が掛かっていて、今が昼過ぎであることを告げていた。
 段々と意識が明瞭りとしてくるにつれ、昨夜の情景が思い出されてくる。

 酷く一方的な口付けを交わした昨夜の雨は、その後も休むことなく降り続けた。
「家へ、いらっしゃいな。私は佳いけれど、あなたが濡れて仕舞うわ」
 彼女に言われるまま、僕は彼女の住むマンションの一室へと附いて行った。エレベーターに乗ってすぐ、彼女は僕に撓垂れかかってくる。いや、撓垂れているように思えたそれは、ただ凭れかかっただけだったかも知れない。彼女は、酷い高熱を出していた。心なしか、息も荒い。
「熱、酷いじゃないですか。病院へは行かれたんですか」
「いやよ、病院なんか。それに、大したこと、ないもの」
「こんな酷い熱で、何を仰有っているんですか」
 彼女は不服そうな顔で僕を見ると、調度開いたエレベーターのドアからさっさと出て行って仕舞った。

       

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