Neetel Inside 文芸新都
表紙

麗しき、殺意。
騒々しい、静寂。

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 彼女は、美しい人だった。
 昼間、滅多に部屋から出ない所為で肌は病的に白く、日光に当たらない髪もまた、色素が薄い。綺麗な鼻。やや薄い唇。形の良い耳。光のない大きな目には、それでいて見る人を惹き込む魅力に溢れていた。
 彼女は美しい人だった。しかし同時に、とても醜い人だった。彼女の顔には、その左半分を覆うかのように、赤黒い痣があったのだ。触れた所で彼女に痛みはなく、その痣はただ、彼女の美しさを破壊するためだけに、そこに鎮座していた。生まれ付きだ、と、彼女は言う。これだけ広範囲だと、手術も出来ないそうだ。その絶望的な赤黒さに触れる度、僕は言う。「綺麗だ」、と。

       

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Neetsha