Neetel Inside 文芸新都
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早く早く、負け犬の裏庭で
スケッチ

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雨の日は
ふと誰かに寄り添いたくなって
周りがみんな同じだけ幸福な人々どうしで
肩を寄せ合っている
この小さなしずくの連続がどうして
私の肌をこんなにつめたくするのだろう
あの影のにおいを知っている人じゃないと手も繋げない気がして
雨降りに
遠い幸福の匂いを嗅いだら
負けたくないから静かに笑うの。


*


秋に思う冬の記憶はいつも
不思議なくらいどんな季節より温度があって
春先の記憶が一番つめたくて、

冬が終わり春が来る手前の
あの小さな境目で
わたしたちはほんの皮膚一枚だけ死んで、

目覚めて増殖していく新しい季節のつめたさに
わたしたちの魂はいちばん冷え込んでしまう
うまくあの境目を越えられなかったら、
永遠に置き去り。

あの透明の青い膜の向こう側で
凍ったままこちらを見ているまぶたのないものたち
うまく殺せなかったら、
わたしが置き去り。


*


生きてくためにこんなに無数の文字列が必要なのはなんでなんで
死なないために詩を書くんじゃなくて
弔うために詩が要るの
生き続けていくなら
死に続けなくてはいけなくて
誰かの嘲笑ですぐに死ぬくらい無意味な文字列、
詩はとてもあっさりした影に似ている。
毎朝一番つめたい空気を吸って目を覚ますことに
麻痺するのも倦むのも飽くのも悟るのも
そんな感じのフリさえ嫌い
いかがわしいわざとらしい
生まれてきて当然なんて顔
どうやってしてるの。


       

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