Neetel Inside 文芸新都
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早く早く、負け犬の裏庭で
漂白

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私のお葬式をするなら
月夜の静かな海岸にして。

夏の終わりの涼しい夜で
空気が青白く光るような時間
満月に近いくらいの月の光と
地面から響いてくるような波音以外は
何もないような場所。
黒い水が砂をさらっていくちょうどその境目に
ごく浅い穴を掘ったら
かつて私だったものを横たえて
そしてあの忌々しい錆びた金属バット
生きているあいだ私を叩きのめし続けたバットを
墓標代わりに突き立てて
それから
小さな白い貝殻をたくさん集めて
私の顔をそれで埋めて。
何も唱えないで
何も歌わないで
そこからそっと立ち去って
波音が聴こえなくなった辺りで全部忘れて
どうかそのまま二度と思い出さないで。

私の死体が一人きりになって
月の光がぼやけ始めた頃
私は波にさらわれて
少しずつ海に引きずりこまれていく
沖合いまで出たらイルカがその腕を引いて
遠く遠くまで連れて行く
世界はずっと夜だ
月が海面を照らし続けるその中で
崩れた肉は洗い流されてだんだん
白い骨だけになっていく。
その頃にはもう彼女は
少しも血の匂いを嗅がない。


       

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